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日本型雇用の崩壊期と重なる? 社会問題に発展した「ブラック企業」
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長時間労働やパワハラ、人材使い捨てなど、劣悪な労働環境の会社を指す「ブラック企業」。最近は特定企業・経営者への批判でよく使われ、社会問題用語として一般化しているが、元々はネット発のスラング(隠語)とみられる。この言葉がネットから現実にあふれ出した背景には、近年大きく変化した日本型雇用の問題も透けてみえる。
「どうか皆様の黒き一票を!」
これは公示された参院選の投票呼びかけではなく、6月27日にネットでノミネート企業が公表された「ブラック企業大賞」に触れたツイートだ。
労働問題に詳しい弁護士やジャーナリスト、労働組合関係者らが選んだ8社を対象にウェブ投票を行い、8月11日に大賞が発表される。
候補には従業員の過労自殺問題などが取り沙汰された外食大手などが並ぶ。「ブラック&グレー企業根絶のために、こういうイベントは歓迎です」(ツイッター)という声がある一方で、この大賞に限らず「ブラック」のレッテルを貼られることに経営者側が反論するなど、ブラック企業批判の反響は広がっている。
ブラック企業という言葉は「もともとパソコン通信時代からネットで使われていた」(個人ブログ)ともいわれるが、広く知られるようになったのは、平成21年公開の映画「ブラック会社に勤めてるんだが、もう俺は限界かもしれない」あたりからだろう。
原作は、前年に刊行された匿名掲示板「2ちゃんねる」の書き込みを基にした書籍だった。2ちゃんねるには今世紀初頭から、「ブラック企業ランキング」といった題名の小掲示板が多数存在しており、ネットを中心に広まったようだ。
そして、この言葉が一般化していった時期は、日本型雇用の崩壊期と重なる。一見、成果主義の導入などで日本企業がドライな外資系的労使関係に移行していった過程のようにも見えるが、そうではなく極めて日本的事象だと指摘するのが、ブログなどで雇用問題のネット議論をリードする労働政策研究・研修機構統括研究員の濱口桂一郎氏だ。
正社員の終身雇用・年功賃金という大きな見返りと引き換えに、企業側に国際的にみても非常に強い命令権を許す「御恩と奉公」の戦後日本的労使関係は、長期不況下の人件費削減で労働者の身分保障や待遇は失われていった一方で、企業側の強い命令権はそのままの形で残った。これがブラック企業発生の一つの要因だと濱口氏は指摘する。
「『ブラックでも終身雇用』が『ただのブラック』になってしまった」(ツイッターから)。理想化されがちな旧来の日本型雇用システム自体に、ブラック企業化の素因が内包されていたという指摘は皮肉だ。
ブラック企業批判に対しては、「若者の甘えでは」「俺も昔は苦労を…」といった年配世代の声も聞かれる。
だが、「昔からブラック的な労働環境は多かったが、あくまで終身雇用と年功序列で将来の安定した生活が約束されていたから耐えていただけで、今のブラック企業は使い捨て前提でしかも労働環境は昔以上にブラック」(匿名掲示板)。雇用関係の構造変化を押さえない議論では、非生産的な根性論で終わってしまうだろう。
ブラック企業がネットのスラングを超えたリアルな社会問題に発展しつつあるのは、必然性があると言わざるを得ない。(磨)
本文で触れた「ブラック企業大賞」の企画委員会は、その定義として、(1)労働法やその他の法令に抵触し、またはその可能性があるグレーゾーンな条件での労働を、意図的・恣意(しい)的に従業員に強いている企業(2)パワーハラスメントなどの暴力的強制を常套(じょうとう)手段として従業員に強いる体質を持つ企業や法人-を挙げている。