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小麦値上げ、たこ焼き店が悲鳴 消費増税も控え…どうするコナモン業界

ニュースカテゴリ:暮らしの生活

小麦値上げ、たこ焼き店が悲鳴 消費増税も控え…どうするコナモン業界

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輸入小麦の値上げで、お好み焼きやたこ焼き業界は価格転嫁への決断を迫られている  大阪の代表的な食文化“コナモン”が、試練の冬を迎えそうだ。原料高や円安を背景に、農林水産省は、10月から輸入小麦の政府売り渡し価格を主要5銘柄の平均で4.1%引き上げ、1トン当たり5万7260円にすると発表。製粉大手関係者は「小麦粉や関連製品の値上げは避けられない」としており、年末から年明けにかけて、家庭用を含めた小麦粉関連商品の値上げは必至の様相だ。

 大阪のたこ焼き店からは「たこ焼き1個分ぐらい原価が上がってしまう」との悲鳴も上がっている。「安くてうまい」たこ焼きは高級メニューになってしまうのか…。

 じわじわ上昇

 輸入小麦の政府売り渡し価格は毎年4、10月に見直されるが、値上げは、昨年10月の価格改定から3回連続。昨年10月には3%、今年4月には9.7%それぞれ引き上げられた。

 これまでの小麦価格の上昇により、日清フーズは家庭用小麦粉を7月出荷分から約2~7%値上げ。山崎製パンなども、食パンや菓子パンなどを値上げした。

 今回の上げ幅は前回よりも小さいが、今後の値下がりにつながる兆しは見えておらず、政府から直接小麦を買い入れる製粉会社では「販売価格への反映を検討する」(日清グループ)という。価格改定は年明け前後と見込まれ、関連する業界は対応を迫られている。

 悩ましいのは、消費税増税を控えた微妙な時期での値上げになりそうな点だ。小麦を原料とする食品メーカーや外食大手は、「商品数を絞り込む」「分量などの規格を見直す」と、価格転嫁をできるだけ避けるよう苦慮している。

 コナモン「値上げは無理」

 コナモンの本場・大阪では小麦粉の価格上昇は深刻な問題だ。お好み焼きチェーン「千房」(大阪市)は、「原価で1人前当たり1円分上がる計算になる」と分析。アベノミクス効果で景気が上向いてきたとはいえ、「外食産業に効果が回ってくるのは一番あと。今の売り上げは横ばいで、まだまだ厳しい」とし、「値段が上がればお客さんは減ってしまう」と、「企業努力」で乗り切る構えだ。

 うどんチェーンの「グルメ杵屋」(大阪市)も、「ここ数年、小麦粉が値上がりしても、連動して値上げしたことは一度もない」。今後の対応についても「消費税増税になれば、ただでさえ影響は厳しい。このタイミングでは上げられないでしょう」と、値上げは検討していないという。

 大阪を中心にたこ焼き店「たこ焼道楽 わなか」を展開する「和なか」(大阪市)は、「在庫もあるので、業務用の小麦価格の実際の値上げは早くても春頃になるのでは」とみる。ただ、「できる限りの企業努力をする」と、こちらも据え置く方向だ。

 「大阪らしいアイデアで」

 すでに価格転嫁に踏み切った店は、冷や水を浴びせかけられた。

 あべのハルカス近くに本店を構えるたこ焼きチェーン「あべのたこやき やまちゃん」は、今年のGW明けからたこ焼きの価格を8個入り350円から400円に50円値上げしたばかり。

 「原油価格高騰で包装資材も油も値上がりして、猛暑で野菜が値上がりして…。卵以外は原価が全部上がっているんです。今度の値上げもめちゃめちゃ響きますよ」と嘆く。

 「何とか消費税増税まではふんばりたいけど、小麦価格の値上げでたこ焼き1個分は原価が上がってしまう」

 苦しい企業努力を重ねる店が多い中、新メニューで売り上げ増を図る店もある。「たこ家道頓堀くくる」(白ハト食品工業、大阪府守口市)は8月31日から人気ドラマ「半沢直樹」にあやかり、道頓堀本店限定でたこ、ネギ、天かすが倍入った「道頓堀倍返し!たこ焼き」の販売を開始した。

 8個850円と通常のたこ焼きより330円も高いが、ドラマ人気と相まって売り上げは順調。同社は「小麦粉が上がったから値上げ、というわけにはいかない。メニュー改良などで対応したい」とする。

 厳しい台所事情を抱えながら、次の値上げへの対応を迫られる大阪のコナモン業界。日本コナモン協会の熊谷真菜会長(51)は「小麦粉や原油価格の高騰は世界的な流れで、何ともしがたい。大変なときだからこそ新しいチャンスだととらえ、どんな新サービスを提供できるか、大阪のコナモン業界に腕をふるってほしい」と話している。(木村さやか)

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