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歴史的音源「SPレコード」 進む音源デジタル化、ネット無料公開も
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戦前から戦後まもなくの時期に国内で製造されたSPレコードを「歴史的音源」として、大規模にデジタル化する作業が進んでいる。デジタル化された一部はインターネット上で無料公開されており、娯楽音楽から歴史上の人物の肉声まで、当時の貴重な音源を気軽に聴くことができる。音の記録から、何が見えてくるのだろうか。(磨井慎吾)
国立国会図書館は、SP盤に収録された音楽や演説などを「歴史的音源」と位置づけ、平成23年からデジタル化資料として提供している。現在、約4万8700音源が館内と全国100以上の公立図書館などで利用可能だ。
うち著作権などの問題がない約1100音源は、同館の歴史的音源専用ウェブサイト「れきおん」で公開されている。先月には日露戦争で活躍した海軍軍人、東郷平八郎(1848~1934年)の「連合艦隊解散式訓示」など約300音源が追加された。同館は「著作権保護期間の満了が確認できた音源は、今後も順次追加していきたい。歴史上の人物の肉声など興味深い音源も多いので、教育・研究で活用してもらえれば」としている。
日本伝統文化振興財団の藤本草(そう)理事長によると、明治末から昭和30年代までの約半世紀に国内で制作されたSP盤の音源総数は、約10万と推定されるという。このうち約半数は原盤として発売元のレコード会社が保管しており、この原盤を中心に、同財団や日本レコード協会など6団体が平成19年に設立した「歴史的音盤アーカイブ推進協議会」によってデジタル化が進められた。一方、残る半数は民間愛好家や資料館が所蔵する一部を除いて散逸・消失してしまったとみられる。
「れきおん」には、民謡や歌謡曲、落語、講談など当時市販されていたさまざまな娯楽音源が並んでいる。その中で、現在の目から見て不思議に映るのが、政治家の演説レコードの多さ。ネット利用が可能なものに限っても、関東大震災後の帝都復興院総裁を務めた後藤新平(1857~1929年)の「政治の倫理化」(大正13年)や、戦時中の首相、東条英機(1884~1948年)の「大詔を拝し奉りて」(昭和16年)など多数にのぼる。なぜ、こうした娯楽とはほど遠いレコードが数多く制作されたのだろうか。
音楽史研究家の郡修彦(こおりはるひこ)さんは「テレビやラジオがなかった時代、レコードこそが時間・距離を超えて演説を届ける画期的な情報発信メディアだった」と指摘する。
大正14年に普通選挙法が成立して有権者が急拡大した時代背景もあり、レコードは政治活動の“飛び道具”として重要な存在だった。
「昭和初期には相当数が制作された。戦時体制下でも、政府の重要放送を記録するレコードが多く作られたが、戦後になるとほとんど作られていない」
NHKラジオで初の政見放送が行われたのは昭和21年。選挙制度もメディア環境も変わり、戦前風の政治レコードは急速に存在意義を失っていった。音の記録を通じて、時代の移り変わりも見えてくる。
【用語解説】SPレコード
戦前主流だったレコード盤の形式。落とすと割れるもろい材質や録音時間の短さなど欠点が多く、戦後まもなく塩化ビニール製で長時間録音できるLP盤が登場すると廃れた。