ニュースカテゴリ:暮らし
生活
恋愛講師に“カリスマホスト” 人口増加で兵庫・加西市が“奇策”
更新
恋愛講座の講師の選考会で加西市幹部に対し、恋愛指南役の心構えなどを話す鶴見一沙さん(右)=9月18日、加西市役所 少子高齢化の中、住民人口が現在5万人を下回る兵庫県加西市が「5万人都市の再生」を政策課題に掲げ、あの手この手で人口増加策を進めている。婚活イベントの男性参加者を対象とした恋愛講座の講師に女心に精通したホストを起用する“奇策”も飛び出すなど、男女の出会いから結婚、定住にまでつながるような支援に知恵を絞る。(前田雅紀)
「女性は見た目で判断するため、清潔感が大切」
「電話番号や住所などのプライベートなことや、身長、体重、年齢などの数字はすぐに聞かない」
10月14日、加西市内のレストランで婚活パーティーを前にした男性対象の恋愛講座が開かれた。タイトルはずばり「モテる男になるための秘訣(ひけつ)」。主催した市の予想を超える46人が参加し、講師の鶴見一沙(いっさ)さん(34)の熱弁を一言も聞き漏らすまいと聞き入る。
鶴見さんはホストが自己アピールや身だしなみなどを競う「全日本ホストグランプリ」で平成16年の第1回王者に輝き、現在は東京・新宿の歌舞伎町などでホストクラブを経営する“カリスマホスト”として知られる。
「恋愛はボクシングと同じ。いきなりストレートはだめ。ジャブしかない」などと次々と繰り出される鶴見さんの恋愛論に、25~45歳の参加者はうなずいたり、メモを取ったりした。
「彼女がほしい」「結婚したい」と婚活パーティーに参加する男性は増える一方だが、恋愛経験の乏しさから女性との距離を縮められず失敗するケースも目立つ。そこで市は女性と接するプロであるホストに恋愛テクニックを伝授してもらおうと講座を企画。これを告知するサイトを見た鶴見さんが講師役に名乗りを上げたという。
ホストに対するマイナスイメージから市に批判の電話も約10件寄せられたというが、恋愛講座の直後に開かれた婚活パーティーでは6組のカップルが誕生しており、成果は早速あったようだ。市の担当者は「交際が順調に発展し、結婚にまで結びつけば」と期待する。
鶴見さんは「自分がどう思っているかではなく、相手の女性がどう感じているかが肝心ということに気づいていない男性もいる。好感を持ってもらわなくては、いくら思いを伝えても無意味。恋愛は学んで努力することが大切だと知ってほしい」とエールを送る。
若い世代にターゲットを絞り、人口増加策を進める加西市。男女の出会いの場の設定をはじめ、デートプランの作成、婚約したカップルのための新居用不動産の見学会の世話など、交際→結婚→定住の流れを作り出そうと懸命だ。
そのわけは22年の国勢調査にある。同市に住む24~34歳の未婚者の比率は、男性が66・2%と兵庫県内41自治体で最も高い。女性の未婚者も49・4%とこの年齢層の半数近くを占め、結婚しない若者が多い。
このため、市は25年度から若い男女の出会いの場をつくる「かさいキューピットプラン」を開始。恋愛講座に加え、男女が参加するカップリングパーティーなどを手がけている。
だが、市単独ではイベントの企画・運営数にも限界があり、民間の協力を得ようと10月22日には流通大手イオングループの商業施設、イオンモール加西北条(同市北条町)との連携を決めた。
同施設は飲食店でカップリングパーティーを開催したり、市などが開催する恋愛講座にスペースを提供するなど男女の出会いに積極的に関わっていくことになるという。
市の人口は19年に5万人を割って以降、減少傾向にあり、今年8月末現在は4万6486人にまで落ち込んでいる。
出生数から死亡数を差し引いた「自然増」は15年度以降連続で、転入数から転出数を差し引いた「社会増」も14年度以降連続で、それぞれマイナスを記録しており、人口減少の加速も懸念される。
特に頭が痛いのが、結婚したカップルが市外へ転出するケース。そのことは市内の子供の数にも顕著に表れ、25年3月末現在、0~4歳が1489人、5~9歳が1815人、10~14歳が2241人となっており、年齢が下がるほど子供の数も少なくなっている。
市内で小児科医院を開業する医師の酒井圭子さん(49)は「若い世代が子供を産み育てたいと思う環境づくりが重要」と、子育て世代の定住を増やすことの重要性を訴える。
人口増への第一歩である男女の出会いの場づくりは順調にスタートしたが、次は魅力あるまちづくりで定住者を増やすことが市にとっての大きな課題になりそうだ。