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ITエンジニア鍛えるKYOSO “トップ私塾”の凄まじき効果

ニュースカテゴリ:暮らしの仕事・キャリア

ITエンジニア鍛えるKYOSO “トップ私塾”の凄まじき効果

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 時代の先端を行くIT(情報技術)業界といえど、エンジニアは自分の技術が頼りという「職人かたぎ」が集まり、マンパワーがものを言う世界。そこで京都のIT企業、KYOSOは社員の「人間力」を磨く研修に力を注ぐ。

 基盤となっているのは、役員や幹部が開く「私塾」だ。役員や幹部が講師となるが、その内容は技術にとどまらず、法律からディベート、生き方などさまざま。12月から私塾を幹部研修と一体化し、より実戦的なものに衣替えするが、その効果はいかに-。

 社員同士の接点に

 「技術力を高めることはもちろん、人間力を向上させていくことも必要だ」。清水信夫総務課長は「人間力」の重要性をこう訴える。

 KYOSOのエンジニアの多くは顧客企業に駐在し、情報システムの開発などを手がける“出張業務”が主。このため同じ会社に勤めていながら「社員同士の接点が少なく、思いを伝える場がなかった。これでは社員教育にも力が入れにくかった」(清水課長)という。

 そんな中、管理職からの提案もあがり、人事面での制度改革の一環として昨年12月、私塾が誕生した。社長を含めた役員や幹部12~13人が自分の得意分野の塾を立ち上げたが、テーマは法律や財務といった業務に関することから、サラリーマンの生き方まで幅広い。

 社員は担当業務に関わりなく、好きな塾を選んで月に1回受講する。講義後には懇親会が開かれ、塾生同士や幹部との交流も深めている。約500人の社員のうち150人が入塾したという。

 スムーズな人間関係も

 私塾への出席は強制ではなく、仕事の後に開かれる。この結果「やる気がある社員ばかりが集まった」と、自ら法律の塾長を務めた清水課長。清水課長の“塾生”は約10人のエンジニアだが、過去の回では、次々に質問が飛んだ。

 「著作権の関係での問題は、どのような点に注意すればいいか」「トラブルが起きないようにするためには、どういう契約が望ましいのか」。エンジニアたちが技術一本槍ではない様子は、なんとも頼もしい。

 また、学ぶのは塾生だけではない。塾には社員の満足度アンケートがあり、塾長たちは塾生から“評価”を受ける。このため幹部は講義に工夫を凝らし、部下に対する指導力など自らの人間力を磨く。

 日々進化する技術ばかりがクローズアップされがちなIT業界だが、技術は人材あればこそ成り立つ。KYOSOは人材を会社の財産として重視することを経営理念に掲げているが、実践は座学にとどまらない。

 例えば同社の前社長は、社員を「さん」付けで呼ぶよう心がけたという。上下関係をフラットにし、スムーズな人間関係と連帯感を生み出そうという試みで、幹部と社員の親交や連帯感が生まれる私塾も、その延長線上にあるようだ。

 幹部も社員も磨く

 12月からは、これまで幹部社員対象の社内研修と私塾とを一体化する。私塾は財務や法律、課題発見など、テーマごとに講義が行われてきたが、幹部と社員がいっしょになり、系統立てて学ぶことになる。先輩後輩の良好な関係などがさらに育まれそうだ。

 また、実際の職場で役立つ仕組みにするのも狙いで、「技術が重視されるエンジニアであっても、法律や財務、ディベートなどの技術を身につけることで、顧客へのプレゼンテーション能力を高めることができるはずだ」と岡田恭子社長。

 創業以来、無借金経営を続けるなど安定した経営基盤が自慢のKYOSO。技術一辺倒ではなく、幅広い知識や視野などを持ち、人間関係の構築にも優れた「人間力」の高い社員を育てることは、創業40年を迎えた同社の新たな強みとなりそうだ。(橋本亮)

◇会社データ◇

本社:京都市中京区蛸薬師通烏丸西入橋弁慶町227

設  立:昭和48年

事業内容:システムオペレーション・運用管理、ネットワーク・システム構築 

売上高:36億5686万円(平成24年11月期)

従業員数:490名(平成24年3月現在)

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