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学習塾が「キャリア教育」 将来像描き、社会に通用する人材に
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勉強の目先の成績アップだけでなく、将来の自分の姿や生き方を思い描き、「何のために勉強するのか」を考えさせる「キャリア教育」を行う学習塾がある。学習意欲を高め、学力向上、自己成長につなげるという。(横山由紀子)
関西で学習塾を展開する「第一ゼミナール」のなかもず校(堺市北区)では水曜日の午後6時半、選抜クラスの小学6年生が意欲喚起教育プログラム「EMS」の授業を受けていた。
講師が「君たちは何のために勉強するのかな」と質問すると、「賢くなるため」「大人になってきちんと仕事するため」と子供たちは口々に返答した。
一通り意見が出そろうと、講師は事前に配っていた、正社員と正社員以外の年収を示したグラフについて話を始めた。両者の年収には約2倍の差がある。「賃金にこれだけの差があります。お金が全てではないけど、将来、結婚したら家族を養っていくことも考えないといけなくなるよ」。真剣な表情でグラフを見つめる子供たちに、「大人になったとき、自分の居場所がどこにあるのか。11、12歳のうちから考えることは大きな意味があるんだよ」と説いた。
後半には、否定的な言葉を前向きな言葉に置き換える訓練も実施。「自己中心的」は「自分の意見がはっきりしている」、「しつこい」は「粘り強い」、「のろま」は「マイペース」。物事を前向きにとらえる訓練になる。いつもの授業とは違う言葉探しに、子供たちは生き生きとした表情を見せていた。
EMSは、将来の目標を持って勉強に前向きに取り組み、学力向上に加え、自己を肯定し自己成長につながるプログラムとして同ゼミナールが開発し、約2年前から授業に取り入れている。夏期講習や冬期講習が始まるタイミングで約1時間実施。通常授業の冒頭でも「何のために勉強に取り組むのか考えよう」と、声を掛けるなどしている。
どの程度の効果があるのか。同ゼミナールの大阪府下9校に通う小中学生約200人を対象に今夏、調査したところ、EMSを受けて2カ月半で中学生の偏差値(英・国・数)が平均51・9から54・4にアップ。「勉強は自己成長タイムと思える」と答えた子供もEMSを受ける前の43%から74%に増えた。
小学6年生の山村さつきさん(12)は「プログラムを受けてから考え方が前向きになり、勉強にもやる気が出た。将来、気象予報士になるため、勉強を頑張りたい」と話した。
関東で展開する小中高校生の進学塾「市進学院」(東京都文京区)も数年前から中学生を対象に、将来の仕事に役立つ資格、社会に出て働くことの意義などキャリア教育を実施し、学習意欲アップを高めている。
第一ゼミナールを運営する「ウィザス」(大阪市中央区)第一教育本部企画戦略部の樋浦忠司部長は「学習指導だけでなく、将来像を描き、プラスの思考を育み、社会に通用する人材づくりを担っていきたい」と話している。
【用語解説】キャリア教育
子供に将来、社会的・職業的に自立し、社会の中で役割を担うことを教えることで学習意欲の向上や学習習慣の確立を図る教育。フリーターやニートなど若者の就労問題への対策として、文部科学省が中心となって小中高校などで実施している。