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「題名のない音楽会」50周年 広がる楽しさ、ジャンル超え交流

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「題名のない音楽会」50周年 広がる楽しさ、ジャンル超え交流

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5月に行われた「題名のない音楽会50周年記念コンサート」から。中央は指揮者の佐渡裕さん  クラシックやポップスなど、幅広いジャンルの音楽を紹介するテレビ朝日系の音楽番組「題名のない音楽会」(日曜午前9時)が、8月に放送50周年を迎える。4代目司会者の指揮者、佐渡裕さん(53)は「大きな節目の年に、この番組を見て育った僕が司会を務めているのは光栄です。長年番組を見てくれている視聴者に感謝したい」と話している。(本間英士)

 同番組は昭和39年8月、オーケストラを通じて音楽の楽しさを広めることを目的に東京12チャンネル(現テレビ東京)で放送開始。41年に日本教育テレビ(現テレ朝)に放送局を移した。初代司会者の作曲家、黛敏郎さんが平成9年に68歳で急逝した後は、俳優の武田鉄矢さん、ピアニストで作曲家の羽田健太郎さんが後を継ぎ、佐渡さんは20年に司会者に就任。21年には「世界一長寿のクラシック音楽番組」としてギネスに認定された。

 開始当初から番組を視聴しているという音楽プロデューサーの高嶋弘之さんは「『難しい』『高尚』と思われていたクラシックという音楽を、『全然難しいものじゃなくて、すごく楽しい音楽なんだ』ということをお茶の間に伝えた番組。視聴者にクラシックの魅力を伝えたことはもちろん、この50年間の放送が音楽家に与えた影響も大きい」と話す。

 番組はクラシックを基調とするものの、黛さんは歌手の美空ひばりさんや、アイドルだった桜田淳子さんを番組に呼んだりした。「クラシック一辺倒ではなく、歌謡曲やポップスも取り上げる懐の深さもあった」と高嶋さん。

 クラシックやポップス、伝統音楽など異なるジャンルの演奏者が同じ曲を“競演”する企画も数多く行ってきた。番組の鬼久保美帆プロデューサーは「他のジャンルと交流することで、出演した演奏者にも『自分の演奏の枠が広がり楽しかった』と言ってもらえている。佐渡さん以外にも、この番組を見て音楽の道を志したという人は多く、音楽業界にも大きな影響を与えてきた」と話す。

 マニアックな音楽も数多く取り上げてきた。例えば、黛さんが米国の作曲家、ジョン・ケージを招いた「現代音楽特集」や、パターン化された音を反復させる「ミニマル・ミュージック特集」、世界各地の「民族音楽特集」。今年4月には「あまちゃん」の音楽を担当した大友良英さんを招いて「ノイズミュージック特集」を行うなど、音楽の多様さを紹介する試みを行ってきた。

 高嶋さんは「黛さんが番組で訴えたかったのは、『音楽は楽しいものだ』ということ。そのDNAは今も番組に受け継がれている」と評価する。

 黛さん、羽田さんの死去に伴う司会の交代など、50年の間には苦難の時期もあった。鬼久保プロデューサーは「表面的な楽しさではなく、本質的な音楽の楽しさを追求するという番組の根幹はこれからも変わらない。今後も視聴者が楽器や合唱を始めるきっかけになったり、そこから『次世代の音楽家』が出てくれたらうれしいですね」と話している。

 ■記念コンサートは来月20、27日放送

 5月に東京都内で公開収録された「題名のない音楽会 50周年記念コンサート」は、7月20、27の両日に放送される。佐渡裕さんが指揮する東京交響楽団のほか、多くの演奏家が集まり、数々の名曲を共に披露する。

 20日の第1部では、ソプラノ歌手の森麻季さんや天童よしみさん、平原綾香さん、さだまさしさんや尺八演奏家の藤原道山さんらが参加。「アベ・マリア」や「ジュピター」「精霊流し」などを披露する。

 27日の第2部では、ヴェルディの「乾杯の歌」やエルガーの「威風堂々」のほか、番組テーマソングの「キャンディード序曲」など、クラシックを中心に放送される。

 佐渡さんは「普段オーケストラはコンサートホールという視聴者とは遠い場所にいるが、テレビだと気楽に見ることができる。クラシック以外にも演歌やポップス、和太鼓などいい音楽が集まっているので、おじいちゃんから子供まで、ジャンルを超えた音楽の楽しさを体験してほしい」と話している。

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