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【ベトナム点景】隣が小さく見えます? 豪華絢爛な“一戸建て”お墓

ニュースカテゴリ:暮らしの余暇

【ベトナム点景】隣が小さく見えます? 豪華絢爛な“一戸建て”お墓

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豪華絢爛なカンディン帝の玉座。像には金箔が施されている=ベトナム中部のフエ(長浜明宏撮影)  ベトナムでは今も土葬が多く、ハノイで会ったガイドのコンさんによると「肉は不浄だから土に埋めて落とし、3年後に骨だけ掘り出す。それを高級な香水で洗ってあげると天国に行ける」そうだ。洗骨しないで肉が付いたままだと「地獄に堕ちて閻魔大王に裁かれる」とか。

 古都フエ郊外にあるホテルを出て、ラオスとの国境に近いフォンニャケバン洞窟へ向かう途中、ほどなくして山の斜面に豪華な霊園が現れた。個々のお墓は沖縄の亀甲墓のように大きい。カラフルな陶器を張り付けているのだろうか。とても派手派手しい。

 この辺りに住む富裕層の多くがベトナム戦争前に米国へ脱出。そして亡命先で成功を収め財をなしたベトナム人たちは、祖国に残してきた家族が死ぬたびに隣と競い合うように豪華な墓を建てていったそうだ。

 近くのリゾートホテルに長期滞在する西洋人が興味を示し、現地ガイドとともにピクニックのようにお墓巡りを楽しむこともあるという。

 ファンニャケバン洞窟近くの村ではキリスト教の墓を見掛けた。多くは教会の形をしており、ベトナムのガイド本などを出している旅ライター、鈴木博美さんは「現地の風習と融合した結果ではないか」と鋭く分析。

 ベトナムで豪華絢爛な墓といえば、フエにある世界遺産のカイディン帝廟だろう。カイディン(1885~1925)について、「自分のことしか考えない、遊びばかりの駄目な王様でした」と案内役のハイさん。政治は宗主国のフランスに任せきりで、11年かけてバロック調のお墓作りに執心したという。

 妻を500人持ち子供を167人も産ませた皇帝がいる一方で、カイディンの妻は1人だけ。愛妻家というわけではなく「自分が大好きで女性に興味なかったのかも」。フランスに亡命した最後の皇帝との血縁を信じるベトナム人はいないとか。玉座の金箔を施されたカイディン像や展示された写真を見ると、確かに中性的な顔立ちをしている。

 これだけの嫌われ者だが、1945年のベトナム8月革命でグエン朝が滅亡しても、 カイディン帝廟は破壊されることはなかった。カイディンが受けた“最後の審判”の結果は定かではないが、遺骨は今も玉座の下に納まっているそうだ。

 “フランスかぶれ”と揶揄する人は多いが、日本のビール瓶の破片も装飾に取り入れた世界に類のない貴重な文化遺産だ。当時の姿のまま後世に伝えることができたベトナム人の冷静さに感謝せねば。(産経デジタル 長浜明宏)

 取材協力:ベトナム航空

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