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戦車や航空機、軍艦にワクワク…「プラモ箱絵」の第一人者 高荷義之展

ニュースカテゴリ:暮らしの余暇

戦車や航空機、軍艦にワクワク…「プラモ箱絵」の第一人者 高荷義之展

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 ■少年に「ワクワク感」与え60年

 勇壮な戦車や軍艦、リアルな鋼鉄の質感をそなえたアニメメカ…。昭和の少年の心を熱くたぎらせたプラモデルのボックスアート(箱絵)の第一人者として知られる画家、高荷(たかに)義之さん(78)の初の本格的展覧会が、東京都文京区の弥生美術館で開かれている。(磨井慎吾)

 高荷さんは昭和10年、群馬県生まれ。高校卒業後の29年、当時子供たちに大人気だった画家、小松崎茂(1915~2001年)に弟子入り。早くも同年に独立を果たし、当時創刊が相次いでいた少年雑誌の挿絵でデビュー。昭和30年代の戦記ブームの中、軍艦や戦車、航空機などのメカを緻密かつ躍動感ある筆致で描き、高い評価を受けた。

 展覧会では、初期の雑誌挿絵から、最近描いたパソコンゲームのパッケージイラストまで、原画を中心に約350点を展示している。約60年にわたる仕事の推移は、そのまま日本の少年娯楽の歴史と重なる。

 高荷さんの作品で最もよく知られているのが、第二次世界大戦当時の戦車や航空機、軍艦などのプラモデル箱絵だ。プラモは昭和30年代後半から大ブームを迎え、その頃に少年雑誌の中心コンテンツが写実的なイラストを挿絵に使った絵物語から漫画に移行したこともあって、メーンの仕事も箱絵に移っていった。

 「今でも高荷先生に箱絵を描いてもらうのは、一種のステータス。それで模型の売れ行きも違ってくる」と、展覧会を企画した同館の堀江あき子学芸員は話す。展示されている「ドイツ陸軍重戦車タイガーI型」(44年)は、この時代の代表作の一つ。ドラマチックな構図とともに正確な考証を重視し、ボルトの一本一本まで緻密に描かれた箱絵は、模型少年から絶大な支持を集めた。

 ミリタリー系模型のブームが下火になった昭和50年代後半から手がけ始めたのが、アニメメカのイラスト。「戦闘メカ ザブングル」「超時空要塞マクロス」「機動戦士ガンダム」など、アニメ雑誌の口絵やプラモデル箱絵を中心に、数多くのイラストを発表した。「“戦車の高荷”にアニメメカを描かせたら面白いだろうという雑誌編集者の発想が当たった。夢の世界の存在が実物のような質感で描かれたのを見て、魅了されたファンも多かったのでは」(堀江学芸員)

 高荷さんによると、当初はアニメが題材のイラストを描くのに少し戸惑ったという。だが、「ゼロ戦が活躍するのもガンダムが活躍するのも、絵としての本質は同じ。軍艦や戦車が人間的な表情を持ったものだと思えばいい。そう腹をくくると、もう悩むことはなかった」と明かす。

 「注文に応じて何でも描いてきただけ」と、自作については控えめに語る高荷さん。ただ、「大人や女の子のためではなく、少年のための絵、という意識はあった」という。「商売を始めたときから、自分が見たい絵を描こうという気分はあった。もちろんそんな都合のいい依頼ばかりじゃなかったけど、気分としては、ワクワクする絵が描きたかったね」

 少年雑誌の挿絵からプラモデルの箱絵、そしてアニメやゲームのイラストへ。いつの時代も高荷さんの絵が少年の心を捉え続けるのは、この「ワクワク感」があるゆえだろう。

 「TAKANI ART WORKS 鋼の超絶技巧画報 高荷義之展」は12月25日まで。月曜休(月曜が祝日の場合は翌日休館)。一般900円。問い合わせは同館(電)03・3812・0012。

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