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父は世界的に有名な鉄道模型製作家 ベンチャーキャピタリスト・原丈人さん
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「最高の鉄道模型を作り上げようとする父の姿をいつも見ていた」と話すベンチャーキャピタリストの原丈人さん(宮崎瑞穂撮影)
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米国や欧州などでベンチャー企業の育成を手掛けるデフタ・パートナーズグループの原丈人会長(61)。経営の理念は、世界的に有名な鉄道模型製作・収集家の父、信太郎さん(95)から学んだ。
世界中の鉄道車両を忠実に再現した信太郎さんの模型は鉄道史を映す貴重なコレクションだ。その一部は、平成24年に開館した原鉄道模型博物館(横浜市西区)に展示している。
「記憶にある限り、生まれて最初に見たのは機関車。家の中にも庭にも走っている。最高のものを作り上げようとする迫力と芸術家が持つ独創性、技術者の緻密さ。そんな父の姿をいつも見ていました」
一般的な鉄道模型とは異なり、本物同様の電線からの電力供給。本物の鉄道技術や鉄のレールと車輪によるリアルな走行音。直径1ミリに満たない部品まで、精巧に再現した芸術性の高さは海外の名だたる博物館からも高い評価を得た。
信太郎さんの仕事は文具メーカー、コクヨ(大阪市東成区)の技術部門の責任者。製造の自動化を図り、300を超す特許を取得して高収益化に貢献した。米国の列車自動運転管理システムから着想し、世界初の立体自動倉庫も開発した。
「人生は楽しむためにある。自分のために便利な機械を考案し、会社に貢献する。自分は楽をする」と考えていた信太郎さん。海外出張に行くと鉄道に乗車し、資料を収集した。製作した模型機関車は約1500台。購入した模型も含め、約6千台を所蔵する。
ところが、信太郎さんは中米へ出張する機会がない。父の代わりに鉄道を調査する目的で、19歳のときに出掛けたエルサルバドルで、マヤ文明遺跡のピラミッドに魅せられた。中米考古学の研究資金をつくるため、米シリコンバレーで光ファイバー・ディスプレー開発会社を起業。その後も情報通信分野の技術を開発する企業を育ててきた。
自身は米国で創業したベンチャーキャピタリスト。だが、米国流の株主の利益を優先する経営ではなく、「公益資本主義」を提唱し、注目されている。従業員や地域社会などにも貢献することで、企業価値を引き上げる考え方だ。
子供の頃、よく信太郎さんに連れられ、コクヨを見学した。高度経済成長期で、工場は残業続き。当時、出始めた冷房器具を、信太郎さんは重役室ではなく、まず工場から設置した。
「暑い中で残業すると、注意が散漫になって機械で指を切り落としたりする人がいる。そうならないようにするのが会社の役割だ。そういうことは会社に返ってくる。不良品が出にくくなって会社の利益率が上がるんだ」と教えられた。
中学では校則の丸刈りに反対し、ただ一人、髪を伸ばした。信太郎さんは「納得できない校則があるなら、いっそのこと、全部破ってごらん」。個人主義と自由主義は父親譲り。「自分で考えて決めたことを堂々とやり通せるのは父の影響です」。丈人は本名。海外に行っても覚えてもらいやすく、日本人でも通用する名前を、との思いが込められている。(寺田理恵)
何のこだわりも、分け隔てもなく、世界中で活動できるのは、小さい頃からの教えのおかげです。人々が人生を楽しめる社会づくりに挑戦していきます。
はら・のぶたろう 大正8年、東京都生まれ。東京工業大卒。昭和26年、コクヨ入社。製造の自動化などで貢献し、専務、関連会社社長などを歴任。平成3年、原総合知的通信システム基金を設立、理事長に就任し、約400人に奨学金を提供した。原鉄道模型博物館館長も務める。
はら・じょうじ 昭和27年、大阪府生まれ。慶応大卒。米スタンフォード大大学院で学び、1981年に米国で起業。84年、デフタ・パートナーズ創設。アライアンス・フォーラム財団代表理事として、途上国の栄養改善などにも取り組む。内閣府本府参与。