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父から叱咤激励「自分で選択肢を狭めるな」 クラウドワークス社長・吉田浩一郎さん
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個人と企業をつなぐ仕事マッチングサイトの運営会社「クラウドワークス」(東京都渋谷区)。社長の吉田浩一郎さん(39)は長い回り道の末、36歳で同社を起業した。新たな道を切り開きながら進む吉田さんは父、利男さん(75)から折に触れて届くメッセージに叱咤(しった)激励されてきた。
「京大を卒業して大手鉄鋼メーカーで働いていた父は、いわゆるエリートサラリーマン。毎日、夜遅く帰宅し、海外出張も多かった」。こう振り返る吉田さんは「父は努力を継続できる人。一方、私は飽きっぽく、何をやってもなかなか続かない子供だった」と苦笑いする。
成績優秀な小学校時代を過ごし、中学から地元・神戸の進学校へ。そこで壁にぶつかる。周りは勉強ができる生徒ばかりで成績は急降下。勉強以外の居場所を探し、純文学やサブカルチャー、宗教、哲学、ビリヤード、ボウリング、演劇などに熱中した。「成績は常に下から数えて10番以内だったが、『勉強しろ』と言われた記憶はない。あまりにもできないため、どうしていいのか分からなかったのでは」
ただ、進路について「大学には進学せず、上京して役者になる」と告げたときは猛反対された。「人間は生きていると可能性が勝手に目減りしていく。生きるうえでの選択肢も勝手に狭まっていく。だから、あえて自分から選択肢を狭めるようなことはするな。大学だけは行け。卒業後は自由にしていい」
そのアドバイスを受け入れて大学に進学。吉田さんは「もし、役者の道のみを選択していたら可能性が狭まり、今のように経営者にはなっていなかった」と感謝の言葉を口にする。
大学では演劇に打ち込み、卒業後は大手電機メーカーの営業マンに。自身の進むべき道を模索し、ベンチャー企業の執行役員として上場を経験したり、ベトナムでのアパレル事業などを手掛ける企業を立ち上げたりした後、クラウドワークスを起業する。「ようやく『やりたいこと』と『向いていること』が一つになった」
吉田さんにとって、利男さんは「いつも見守ってくれ、危うさを感じたときは『大丈夫か』と問い掛けてくれるありがたい存在」。最初に起業した際は、「本気で展開する気があるのか考えろ。本気でないのなら早めに整理を考えろ」という内容のメールが送られてきた。結局、その事業は約3年で失敗に終わる。
クラウドワークスについてはサービス開始の翌日、励ましのメールが届いた。「このプラットフォームは良いと思う。ここに着眼し賛同する友人を結集した手腕は大したもの。(中略)成功を祈る」。「ようやく認めてもらえたと思い、うれしかった」
同社のサービスを使えば個人が企業などから直接、インターネットを介して仕事を受注できるため、時間や場所、組織にとらわれない働き方ができる。「人が働く主な目的は人とのつながり。より多くのつながりをつくり、笑顔を生み出していきたい」 (竹岡伸晃)
「私にとっての天使だ」と言いながら母を愛し続けている姿が心に焼き付いています。人とのつながりの模範となる姿を教えてもらいました。末永く長生きしてください。
よしだ・としお 昭和14年、大阪府生まれ。京都大卒。37年、神戸製鋼所入社。主に財務・企画畑を歩み、定年まで勤め上げる。
よしだ・こういちろう 昭和49年、兵庫県生まれ。東京学芸大卒。平成11年、パイオニア入社。展示会企画会社やIT(情報技術)関連企業「ドリコム」執行役員を経て、19年、「ZOOEE(ゾーイ)」起業。23年に「クラウドワークス」を起業し、社長兼CEO。著書に『世界の働き方を変えよう クラウドソーシングが生み出す新しいワークスタイル』(総合法令出版)など。