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「1人お節」好調…コンビニでも販売 正月の食卓に“個食化”の波

ニュースカテゴリ:暮らしの生活

「1人お節」好調…コンビニでも販売 正月の食卓に“個食化”の波

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京都の老舗料亭「下鴨茶寮」の個食お節「和三客」(1万9440円)。3つのお重にそれぞれ1人分が入った「一人一重」スタイルだ=東京都中央区の日本橋高島屋  正月に一家の健康と繁栄を願って食べる「お節料理」。1人暮らしの増加や食の多様化により「1人用お節」の販売が好調だ。正月の食卓にも「個食化」の波が押し寄せている。(村島有紀)

 プチぜいたく

 「1人暮らしでも、お節で正月気分を」とコンビニエンスストア、サークルKサンクス(東京都中央区)が、1人用お節「華(はな)GOZEN(ゴゼン)」(1980円)の全国販売を始めた。事前に予約をして12月30日から来年1月4日までに店頭で受け取る。また、予約なしで大みそかに店頭販売する店もある。店頭での1人用お節の販売は、コンビニ業界初の試みだ。

 縁起物の有頭エビや黒豆などのほか、サラダ、黒毛和牛焼き肉など弁当風総菜も含め全12品目。広報担当の篠崎直人さんは「1人暮らしの若い世代も『お節で正月を祝いたい』という気持ちがある。ハレの日のプチぜいたくとして手にしてほしい」。

 1人暮らしの都内の女性会社員(44)は「手のかかるお節は自分で作らない。好きな品が入ったお節なら買いたい」と話す。

 サークルKに先駆けて1人用お節の販売を始めたコンビニが、セブン-イレブン・ジャパン(千代田区)の宅配サービス「セブンミール」だ。セブンミールは、単身高齢世帯の増加などから平成12年に埼玉県で宅配を開始。現在は全国約1万3200店で日替わり弁当や日用品を配達している。

 登録会員の6割が60歳以上の高齢者。「よいものを少しだけ」というニーズに応え、サービス開始当初から人気具材を集めたお節を販売し、年々売り上げが伸び続ける。今年のお節「お正月料理膳」の予約も好調だ。

 また、インターネットで宅配お節を注文する人も増えている。ネットショップ「楽天市場」に10年前から出店する料理店、博多久松(福岡市博多区)は1人用お節「祇園」(6500円)を6年前から始めた。販売個数は右肩上がりで増加中。今年は6年前の約7倍の1800個を見込む。松田健吾店長は「一番多いのは、独身とみられる50代男性からの注文。1人暮らしの親や子供に送るケースも多い」と話す。

 家族がいても

 一方、家族がいても「個食お節」のニーズが高まっている。

 個食お節は、複数の重箱に全く同じ具材が入る。従来のように一の重、二の重、三の重を広げて皆で取り分けるのではなく、それぞれに同じ内容の重を1つずつ置く「一人一重」スタイルだ。

 日本橋高島屋(東京都中央区)は「一人一重」の販売を2年前に開始。年々種類を増やしている。担当者は「ライフスタイルの多様化で、元旦にそろうのは夫婦だけ、遅くまで勤務していた娘は昼まで寝ているという家庭もある。食べかけのお節ではなく、新しいものを食べさせたいと購入する親もいる」と話している。

 ■「単独世帯」増加、4分の1に

 コンビニ各社や料理店が1人用お節を販売するのは、核家族化や非婚化などで1人暮らしの「単独世帯」が増えているためだ。厚生労働省の「国民生活基礎調査」(平成25年)によると、1世帯当たりの平均人数は昭和28年に5人だったが平成元年には3.1人、昨年は2.51人にまで減少した。「単独世帯」も増加傾向で、昨年6月現在で約1328万世帯。元年に20%だった全世帯に占める単独世帯割合は、25年に26.5%まで増えた。国立社会保障・人口問題研究所は、今後もこの傾向が続くと予測する。

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