ミクロでバランスが取れれば、マクロでもバランスが取れます。平均余命の延びに見合って就労期間を延ばすことでバランスを取ることができれば、マクロ経済スライドによる給付水準調整期間が短くなって受給水準は維持されますし、そもそも年金制度加入期間が長くなりますから年金額もアップします。
スウェーデンでは、平均余命の延びに対してどのくらい就労期間を延ばせば給付水準が維持できるかを国民に示しています。たとえば1930年生まれと1995年生まれを比較し、65歳時点での平均余命は6年9カ月延びているので、引退年齢を4年4カ月延ばすとバランスする(給付水準が維持できる)、という具合です。
繰り返しますが、年金は社会や経済の縮図です。平均寿命の伸長に合わせて働く期間を長くするというのは、本人のためにも社会全体の持続可能性を確保するためにも必要なことです。そのことを年金の世界で考えればこうなるというだけの話です。
かくして、話は戻ります。雇用保障と年金をセットにした制度設計。雇用政策と一体となった年金制度改革。これがぜひとも必要です。「普通の人が普通に働いて普通に暮らせる」仕組みの構築を目指し、雇用と年金は一体的に考えるということです。
※本稿は個人的見解を示したものであり、外務省ともアゼルバイジャン大使館とも一切関係ありません
香取照幸(かとり・てるゆき)
1956年、東京都生まれ。東京大卒。厚生労働省で政策統括官、年金局長、雇用均等・児童家庭局長を歴任。内閣官房内閣審議官として「社会保障・税一体改革」を取りまとめた。現駐アゼルバイジャン共和国大使。
(香取 照幸 撮影=村上庄吾 写真=iStock.com)