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デザイン文化を構築するリーダーシップとは? 国ごとに異なる“成熟度”
安西洋之
見方を変えれば、デザイン文化があまりない国に生まれたがゆえの貴重な研究成果である。デザイン文化の基盤がそれなりにあるイタリアは、研究手法を学ぶには良いが、デザイン文化の構築の実験舞台には相応しくないかもしれないからだ。
ところでリトアニアをめぐり、ぼくがよく引用するエピソードがある。
ルータのミラノ工科大学の指導教官から直接聞いた話だ。彼は世界各地から留学してくる学生や、自ら各国に出かけて行う授業で学生を前にして、決まって尋ねる質問がある。
「君たちが美しいと思うものを挙げてくれ」
中国であろうとインドであろうと、あるいはブラジルであろうと、8割の学生は自然の美しさを称える。そして残りの2割は、さまざまだ。そこで、彼はぼくにこう話した。
「リトアニアの大学の授業で、1人の女子学生がフルメーキャップに高いヒールが美しい、と言ったのだよ。こういう声は、デザインを学ぶ西ヨーロッパの学生からはでない」
ぼくは彼のこのコメントには少々意見があるのだが(化粧やファッションを下に見ていないか?)、これがデザイン文化定着の度合いを指している現実であることも確かである。