ローカリゼーションマップ

デザイン文化を構築するリーダーシップとは? 国ごとに異なる“成熟度”

安西洋之
安西洋之

 より成熟した文化では、外面的な美から内面的な美へ評価軸が移りやすい。またファッションブランドも他人が一見してすぐ分かるようなロゴのついたものは身につけず、分かる人には分かる質のよい服を好む。

 他方、ルータの研究課題は、デザインのエキスパートではない人たちが、デザイン文化に接してどのようにそれを使っていくかであり、ここで述べている美しさの話とは距離がある。

 それでもデザインから審美性や美意識を落としたところで、一企業ではなく国としてデザイン文化が根付くとはどういうことかとのイメージがしづらい。

 先日、ある人と会っているとき、「欧州の某大手自動車メーカーのデザインのトップが、料理をデザインとは呼ばせない、と私の前で豪語していました」と話してくれた。

 カーデザイナーが言いそうなセリフだと思った。何をエラソーにと思う人も多いだろう。

 ただ、「デザインの意味が変わってきたのだから、こういう物言いは古臭い」と一蹴するのも違うと感じた。このカーデザイナーがつくるモノには、考え抜いた跡が見える。

 そこには言ってみれば「言語化されて解像度が上がった」と称賛するレベルの何十倍か何百倍かの緻密性がある。だから、それだけの自負がある。

 この点は外せない。

 ルータは美しい女性であり、服もお洒落だ。指導教官曰く「リトアニアでルータほどファッションセンスのよい女性を見たことがない」。

 デザイン文化を作っていくリーダーシップとは?

 博士論文審査会は、このテーマを多角的に考えさせてくれる契機となった。

▼【ローカリゼーションマップ】のアーカイブはこちら

安西洋之(あんざい・ひろゆき)
安西洋之(あんざい・ひろゆき) モバイルクルーズ株式会社代表取締役
De-Tales ltdデイレクター
ミラノと東京を拠点にビジネスプランナーとして活動。異文化理解とデザインを連携させたローカリゼーションマップ主宰。特に、2017年より「意味のイノベーション」のエヴァンゲリスト的活動を行い、ローカリゼーションと「意味のイノベーション」の結合を図っている。書籍に『イタリアで福島は』『世界の中小・ベンチャー企業は何を考えているのか?』『ヨーロッパの目 日本の目 文化のリアリティを読み解く』。共著に『デザインの次に来るもの』『「マルちゃん」はなぜメキシコの国民食になったのか?世界で売れる商品の異文化対応力』。監修にロベルト・ベルガンティ『突破するデザイン』。
Twitter:@anzaih
note:https://note.mu/anzaih
Instagram:@anzaih
ローカリゼーションマップとは?
異文化市場を短期間で理解すると共に、コンテクストの構築にも貢献するアプローチ。

Recommend

Biz Plus

Ranking

アクセスランキング