ネーミングに抵抗感
つまり、運転という移動手段を失う。すると外出が減り、足腰が弱くなる。自宅で塞ぎ込むことが増える。要介護リスクが増す…というわけである。
だというのに、福祉車両の普及率は低い。足腰の不自由な障害者で1割。足腰の不自由な高齢者では0.1割だというのだ。日本の社会は要介護リスクが高いのである。
それが型式認定を取得した意義である。福祉車両というネームミングが、ユーザーの抵抗感を生む。それを取り除くことで普及をうながしたいというわけだ。
ちなみに、足腰が不自由なユーザーだけではなく、たとえばスカートを履いた女性にも、乗降のしやすさがメリットになると思う。もっといえば、着物でのドライブでも、ありがたい装備である。
「たとえばレクサスLCといったスポーツカーなどではいかがでしょう」-。そう提案したら、予期せぬ提案に困惑した表情になったが、僕の発想はあながち間違っていないのだろうと確信した。
着座点の低いスポーツカーでこそ、スマートにのりたいものだ。機構的に成立するかはともかく、「あり」だとは思った次第である。「ターンチルトシート」はヤリスの「良心」である。
【クルマ三昧】はレーシングドライバーで自動車評論家の木下隆之さんが、最新のクルマ情報からモータースポーツまでクルマと社会を幅広く考察し、紹介する連載コラムです。更新は原則隔週金曜日。アーカイブはこちら。木下さんがSankeiBizで好評連載中のコラム【試乗スケッチ】はこちらからどうぞ。