ヤナセ品であることが品質の証
個人売買のネットを巡れば、ヤナセの果たした役割がわかる。青く縁取りされた黄色い「YANASE」のステッカーが、いまでも高値で販売されているのだ。というのもつまり、GMなりメルセデス・ベンツなり、ヤナセのステッカーが貼られているからこそホンモノであり、並行品とは異なり品質が保証されていることを意味するからだ。
中古車サイトをサーフィンしていても、こんな記述が目につく。「〇〇車 ▲▲年式、ヤナセ車」。ヤナセ品であることが、品質の証なのだ。その記述だけで取引価格が数十万円跳ね上がる。
こんな記述もある。「ヤナセメンテ車 車検ヤナセ」。ヤナセで定期的なメンテナンスを受けているかが、中古車の価値を決めるからだ。
僕も古いメルセデスを所有しているが、ヤナセのステッカーをスペアとして保管してある。万が一事故などに遭遇し、ステッカーが貼られているバンパーを交換せねばならなくなったときに備えているのだ。
ヤナセ製の車検証ケースもネットで高値取引されている。一部の販売会社がブランドとして認知されている稀有な例である。そしてそのブランドパワーは、世界の各メーカーが日本法人を設立したいまでも残る。クルマが個体としての価値ではなく、販売店を含めての動産であることを物語る。
【クルマ三昧】はレーシングドライバーで自動車評論家の木下隆之さんが、最新のクルマ情報からモータースポーツまでクルマと社会を幅広く考察し、紹介する連載コラムです。更新は原則隔週金曜日。アーカイブはこちら。木下さんがSankeiBizで好評連載中のコラム【試乗スケッチ】はこちらからどうぞ。