鉄道業界インサイド

100年に一度の変革期 鉄道にやがて訪れる「2つの変化」とその狙い

枝久保達也
枝久保達也

 JR東日本によれば、山手線の終電付近(0時台)の利用者はコロナ前と比較して66%も減少しているという。利用実態に合わせたダイヤとすることで、深夜帯の営業コストを削減したいという恰好だが、終電繰り上げの目的はそれだけではない。終電から初電までの間隔(列車間合い)を約240分(4時間)程度確保することで、夜間に行われる線路などの保守点検の作業効率を改善するとともに、労力軽減と工期短縮により作業員の働き方改革を後押しするのが、もうひとつの目的だ。

 例えば現在、京浜東北線の東京駅発南行最終電車は0時49分発蒲田行で、蒲田には1時11分に到着する。一方、蒲田駅北行初電車は4時22分発大宮行きなので、蒲田駅の列車間合いは3時間強しか確保できていない。これを240分とするためには、終電を30分繰り上げ、初電を20分繰り下げる必要がある。自身の利用路線がどうなるか気になる読者も多いと思うが、実施線区や内容については10月頃に発表予定とのことだ。

 運賃制度の見直し

 第二の変化は数年以内に訪れる運賃制度の見直しだ。JR四国は8月31日の会見で、新型コロナウイルスの影響で減少した収入の回復が見込めないとして、運賃値上げの検討を開始すると表明している。コロナ以前から経営危機に瀕していたJR四国と都市部の鉄道事業者は単純比較できないものの、運賃値上げは他の鉄道事業者にも波及する可能性がある。

 その中でもユニークなアイデアを検討中なのがJR東日本だ。同社は2~3年後をめどに、定期券運賃を値上げする一方で、混雑していない時間帯のみ使用できる割安なオフピーク定期券を新設する計画だという。

 ただしこれは増収策というわけではなく、定期券運賃の値上げによる増収分と、オフピーク定期券の導入による減収分で、プラスマイナスゼロになるように考えているようだ。だが、朝ラッシュ時間帯の輸送力を確保するために莫大な投資をしている鉄道事業者としては、利用が平準化され、ピークが解消されれば経営効率が改善するというメリットがある。これもまた、鉄道サービスをサスティナブル(持続可能)に提供していくための、構造改革の一環というわけだ。鉄道は今、100年に一度の変革期を迎えている。

枝久保達也(えだくぼ・たつや)
枝久保達也(えだくぼ・たつや) 鉄道ライター
都市交通史研究家
1982年11月、上越新幹線より数日早く鉄道のまち大宮市に生まれるが、幼少期は鉄道には全く興味を示さなかった。2006年に東京メトロに入社し、広報・マーケティング・コミュニケーション業務を担当。2017年に独立して、現在は鉄道ライター・都市交通史研究家として活動している。専門は地下鉄を中心とした東京の都市交通の成り立ち。

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