伊達や酔狂ではないマニュアルモデル
それもこれも、伊達や酔狂ではなく本気である。ターボとの理想的なギアリングを目指したのは当然のことだが、スポーティフィールを演出するためにシフトの動きそのものはショートストロークになっている。わざわざクラッチダンパーを組み込むなどして振動を抑え、クラッチがしっかりと圧着している。マニュアルミッションを操る時に大切な、ダイレクト感を得ているのだ。
それでいて左足の踏力には優しい。不用意なシフトダウンでボディがギクシャクするような、そんなシフトショックも抑えられている。付け焼き刃で6速マニュアルミッションを組み込んだのではなく、はっきりとした思想に基づき開発された形跡がある。
しかも、AHA(アジャイル・ハンドリング・アシスト)システムを組み込んでいる。コーナリング姿勢が不安定になった場合、ドライバーが操作せずともブレーキが作動する。外輪や内輪などに、ドライバーがそれと感じない優しい感覚でブレーキング制御するのだ。これがクルマの姿勢を整える。これほど贅沢(ぜいたく)な制御システムまで盛り込んでいるというのだから頭が下がるのである。
ボディ剛性が高まっていることや、スポーティでありながら乗り心地が異例に優れていることなど、こうして原稿を書き進めている今になって記憶の扉が開かれた。つまりはそれほど熱い、本気のマニュアルモデルなのである。
【試乗スケッチ】は、レーシングドライバーで自動車評論家の木下隆之さんが、今話題の興味深いクルマを紹介する試乗コラムです。更新は原則隔週火曜日。アーカイブはこちら。木下さんがSankeiBizで好評連載中のコラム【クルマ三昧】はこちらからどうぞ。YouTubeの「木下隆之channel CARドロイド」も随時更新中です。