クルマ三昧

高いレベルで拮抗した「日本カー・オブ・ザ・イヤー」で誰もが認めた”大賞”

木下隆之
木下隆之

優秀モデル多く…選考委員の得点ばらける

 ちなみに、「デザイン・カー・オブ・ザ・イヤー」はマツダ「MX-30」。観音開きの「フリースタイルドア」や特徴的な造形など、デザインのマツダをアピールするに相応しいクルマだった。「テクノロジー・カー・オブ・ザ・イヤー」はアウディ「e-tron Sportback」。EV(電気自動車)としての完成度の高さは秀逸で、高度な発電蓄電テクノロジーやデジタル式の安全デバイスの数々に加え、パワーも力強く、高級感において秀でている。開発途上のEVはまだ性能ありきであり、実用性の競い合いである。そんな世界にすでにEVならではの高級感に足を踏み入れてきたのは驚きである。

 「パフォーマンス・カー・オブ・ザ・イヤー」はBMW「ALPINA B3」に決定した。走りは官能的でありながら、パフォーマンスは他の追随を許さない。悩むことはなかった。日産「ルークス」、三菱「ekクロススペース/ekスペース」が「K CAR オブ・ザ・イヤー」に輝いたのも順当な結果だろう。

 これが2020年-2021年日本カー・オブ・ザ・イヤーの最終結果なのだが、今年の特徴は、優秀なモデルが多く、平均的に高いレベルで点数が拮抗(きっこう)したことである。スバル「レヴォーグ」が抜きんでたという印象は強いが、選考委員の得点がばらけたのがその証拠だ。その中で「レヴォーグ」が多くの得点を集めたのは、取りこぼしのなさである。つまり、ほとんどの選考委員が満点ではないにせよ、何らかの配点をしていることである。日本カー・オブ・ザ・イヤーの”大賞“は誰もが認めたスバル「レヴォーグ」にこそ相応しい。

木下隆之(きのした・たかゆき)
木下隆之(きのした・たかゆき) レーシングドライバー/自動車評論家
ブランドアドバイザー/ドライビングディレクター
東京都出身。明治学院大学卒業。出版社編集部勤務を経て独立。国内外のトップカテゴリーで優勝多数。スーパー耐久最多勝記録保持。ニュルブルクリンク24時間(ドイツ)日本人最高位、最多出場記録更新中。雑誌/Webで連載コラム多数。CM等のドライビングディレクター、イベントを企画するなどクリエイティブ業務多数。クルマ好きの青春を綴った「ジェイズな奴ら」(ネコ・バプリッシング)、経済書「豊田章男の人間力」(学研パブリッシング)等を上梓。日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員。日本自動車ジャーナリスト協会会員。

【クルマ三昧】はレーシングドライバーで自動車評論家の木下隆之さんが、最新のクルマ情報からモータースポーツまでクルマと社会を幅広く考察し、紹介する連載コラムです。更新は原則隔週金曜日。アーカイブはこちら。木下さんがSankeiBizで好評連載中のコラム【試乗スケッチ】こちらからどうぞ。YouTubeの「木下隆之channel CARドロイド」も随時更新中です。

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