自動車産業はもはや国家そのもの
温室効果ガスの排出を実質ゼロにし、「カーボンニュートラル」脱炭素社会の実現を目指すと菅義偉首相が語った。それに対しても豊田会長は全面的な協力を惜しまないとも語る。そのためには自動車の排出ガス削減だけではなく、自動車の製造過程で排出される二酸化炭素や、EV(電気自動車)化に欠かせない電気を製造する際に放出されるCO2の低減にも取り組まねばならない。それはとても難題であると想像するが、ともあれ国家を挙げてのプロジェクトに協力したいとも語ったのである。
日本自動車工業会会長としての年頭の挨拶は、550万人の自動車産業の携わる人たちへのメッセージではあるが、あるいはそれは、自動車産業に直接関わりのない人たちを含めて、日本国民を鼓舞するためのメッセージなのかとも思えた。
クルマに携わる550万人の枠をもっと広げ、僕らのように自動車関係の記事を寄稿することで生計を立てている人やレーシングドライバー、さらには自動車メーカーに寄り添うことで生計を立てている人、工場に隣接する食堂の料理人や通路をきれいにしてくれている掃除の人や、そしてさらには僕にも家族がいて、養うべき人たちがいる。日本の基幹産業である自動車産業に寄り添い生活している人たちを含めると、その数は550万人を大きく超えて、数千万人になるはずである。もはや自動車産業は国家そのものである。
そんな、国民に対しての力強いメッセージだった。
【クルマ三昧】はレーシングドライバーで自動車評論家の木下隆之さんが、最新のクルマ情報からモータースポーツまでクルマと社会を幅広く考察し、紹介する連載コラムです。更新は原則隔週金曜日。アーカイブはこちら。木下さんがSankeiBizで好評連載中のコラム【試乗スケッチ】はこちらからどうぞ。YouTubeの「木下隆之channel CARドロイド」も随時更新中です。