分かる人だけが分かる上質の空間
ボディサイズはミドルセダンの中心にいる。全長は4975mmであり、日本の道で持て余すことのないであろうサイズの最大、と言ったところだろう。大人4人をリラックスさせることのできる最小のサイズでもある。
インテリアは上質である。幼い感覚は一切なく、絢爛(けんらん)な豪華さも抑えられている。レクサスLSともなれば、西陣織、プラチナ箔と美学がグイグイと迫ってくるのに対し、レクサスESはそういった押しの強さを抑えたまま、分かる人だけが分かる上質の空間が広がるのだ。
搭載するパワーユニットは、レクサスESの伝統的ハイブリッドだけ。直列4気筒2.5リッターハイブリッドは、2021年モデルになって待望のリチウムイオン電池が積まれることになり効率がアップ。とはいうものの、力強い加速を披露するわけもなく、穏やかな発進に終始する。それがレクサスESらしいとは納得しつつも、物足りなく感じたのも事実である。
ただ、フットワークは目が覚めるように整っている。駆動方式はFFだが、前輪駆動の悪癖であるフロントヘビー感覚が一切ない。ボディ剛性が引き上げられており、しかも凝った構造のスプリングダンパーが組み込まれている。ステアリングを切り込むと、決して過激ではないものの素早く旋回力が立ち上がる。その感覚が、速度を上げていっても衰えないのだ。アクティブコーナリングアシストがいい仕事をしている。ドライバーに制御のありかを悟られない絶妙の優しさでコーナリングを整えているのである。
はっきり言って、レクサスの中で最も上質な走り味を備えているのがレクサスESだと断言したい。ただし、その高性能を誇示するようなことは全くない。レクサスESはレクサスの中で最も奥ゆかしい。いかにも日本人らしい高級車という気がする。
【試乗スケッチ】は、レーシングドライバーで自動車評論家の木下隆之さんが、今話題の興味深いクルマを紹介する試乗コラムです。更新は原則隔週火曜日。アーカイブはこちら。木下さんがSankeiBizで好評連載中のコラム【クルマ三昧】はこちらからどうぞ。YouTubeの「木下隆之channel CARドロイド」も随時更新中です。