趣味性の高い魅力的なEV
数々の先進技術の中で、まず目が吸い寄せられたのは、デジタルのサイドミラーである。本来サイドミラーがある位置に小さなカメラを設置。カメラが捉えた画像をドアに埋め込まれたモニターに映し出すというものだ。レクサスESが世界で初めて発表した機能だが、モニターがドアに埋め込まれている点がスマートで好ましい。だが広角エリアや距離感の曖昧さが消えておらずドライビングに神経を使う。まだ鏡の精度には及ばない。今後に期待の機能だと思える。
ともあれ、気になる航続距離と充電時間の関係が消化されていないのも事実。アウディe-tronに限らず、この手のビッグパワー大容量EVが抱える問題点が浮き彫りになる。
バッテリー容量は71kWhである。一充電の走行可能距離は316km(WLTCモード)である。充電できる電力量は100Vの普通ケーブルでは3kW。200Vに増強していても8kWだ。夜通し通電させていても満充電にはならないこともある。
巷(ちまた)の25kWh急速充電器でも、30分では50kmほどしか走行距離が稼げないし、高速道路に設置されている50kWh急速充電器でも100km程度である。100km走行するのに30分のチャージが必要だとするのならば、ロングドライブは現実的ではない。アウトバーンを往復する姿は想像できないのだ。充電ステーションが充実している日本であっても、ロングレンジEVに躊躇してしまう理由になる。
とはいうものの、充電残量の心配の少ない近所の往復では、その圧倒的な性能は猫に小判である。電気消費量に優れたコンパクトEVが有利だ。という意味では、アウディe-tronは多分に趣味性が高いEVということになるが、それでもe-tronは魅力的に見えるのだ。
【試乗スケッチ】は、レーシングドライバーで自動車評論家の木下隆之さんが、今話題の興味深いクルマを紹介する試乗コラムです。更新は原則隔週火曜日。アーカイブはこちら。木下さんがSankeiBizで好評連載中のコラム【クルマ三昧】はこちらからどうぞ。YouTubeの「木下隆之channel CARドロイド」も随時更新中です。