新時代のマネー戦略

FRBのテーパリングで金投資に警戒感 不安局面での「金の買い方」

小松英二
小松英二

1.旺盛な中央銀行による金購入

 金価格をみるうえで、ポイントを3点指摘したいと思います。

 金は「貴重な鉱物資源! 地球上の総量は50mプールの4杯弱」と言われています。その金の価格は需要がカギを握ります。

 特に注目したいのは中国とインドの旺盛な需要。両国とも歴史的に金を好む国民性もありますが、2000年代以降の経済発展による所得の増加により、いっそう需要が高まりました。新型コロナによる景気減速により、一時落ち込みましたが、先行きは勢いを取り戻すものと思われます。

 また、世界の中央銀行が盛んに金を購入していることも見逃せません。各国中央銀行は、「外貨準備」として米ドル、ユーロといった主要通貨のほかに、金も保有しています。主要先進国の中央銀行はだいぶ以前から保有していますが、このところインド、ブラジル、タイなどの新興国の中央銀行の金の購入が目立ちます。

 背景には、政治・経済環境の不確実性が高まるなか、ドルやユーロなど主要通貨への依存度を下げ、外貨準備の中身を分散したいといった意図があるようです。

2.ドルの信認低下が金価格を押し上げる

 ドル(一般に預金など流動性の高い資産で保有)と金の特性は、他の資産からの転換のしやすさ(流動性)です。そのため代替関係にあり、価値は相反することが少なくありません。わかりやすく言うとライバル関係にあります。特に近年は、超金融緩和で通貨供給が増えるとともに「ドルの信認低下」が進み、金の価値が相対的に浮上(上昇)しています。

 そのドルですが、米連邦準備理事会(FRB)の総資産(増額は金融緩和)は、コロナ・ショック前の4兆ドル(440兆円)程度から、過去に例のない8兆ドルを超える水準となり、市場に緩和マネーがじゃぶじゃぶに供給されました(図表参照)。

 FRBだけでなく、異次元な緩和マネーを流し込む各国中央銀行の金融政策は、コロナ禍のなかで経済の立て直しにつながるとともに、株価は史上最高値を更新、金価格も最高値圏に押し上げました。

 原理的に、大規模な金融緩和はドルの希薄化、つまり「ドルの信認低下」につながります。さらに、主要先進国中で際だって拡大する米国の財政赤字(図表参照)も米国債の格下げリスクを高め、「ドルの信認低下」を加速していることも見逃せないでしょう。トランプ政権、バイデン政権と続いた異例な財政拡張政策が背景にあります。

 こうした「ドルの信認低下」が、国や企業といった発行体のリスクとは全く無縁な、いわば「無国籍」といえる金の投資に向かっているのです。

3.米国は金融正常化へ! 過去に金急落の引き金に

 FRBの金融政策の転換期に、金価格のトレンドが変わることがあります。

 そのFRBは、新型コロナと戦う超金融緩和状態から、「金融正常化の第一歩」を模索しています。市場では、金融緩和の段階的縮小(テーパリング)は、早ければ年内開始との観測が高まっています。このテーパリング開始までの道のりで、過去に金価格は急落しました。その経緯を簡単に振り返りましょう。

 かつてFRBは、リーマン・ショック(2007年から2008年の金融恐慌)で落ち込む経済や金融を立て直すため、かなり踏み込んだ量的金融緩和(2008年~2013年)により、大量のマネーを市場に供給。金価格も当時の最高値圏にありました。

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