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厚労相ら反発 「高リスク」扱い焦点
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≪薬ネット販売 99%解禁へ≫
菅義偉(すが・よしひで)官房長官(64)や田村憲久厚生労働相(48)ら4閣僚が6月4日、首相官邸で一般用医薬品(市販薬)のインターネット販売全面解禁について詰めの協議を行い、市販薬約1万1400品目のうち99%超のネット販売を可能にする方針で大筋合意した。ただ、副作用のリスクが高いためネット販売を除外する第1類の薬の取り扱いについて意見がまとまらず、結論を持ち越した。関係閣僚は、14日に閣議決定する成長戦略に薬のネット販売を盛り込むため詰めの調整を急ぐ。
安倍晋三首相(58)は4日の参院経済産業委員会で「ネット販売を認めることは国民の利便性を高める」と述べた。今後の閣僚間調整について安全性を確保できる新たなルールづくりを急ぐよう指示したことも明らかにした。菅氏は記者会見で「17~18日に英国で開かれる主要国(G8)首脳会議までに取りまとめるのが基本的な考えだ」と述べた。
薬局で購入できる市販薬をめぐっては、最高裁が今年1月、第1、2類のネット販売を一律に禁じた厚労省令を違法と判断した。これを受け、政府の規制改革会議が厚労省に省令撤回を求めていた。(SANKEI EXPRESS)
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≪厚労相ら反発 「高リスク」扱い焦点≫
全市販薬のインターネット販売の是非をめぐり政府内では、全面解禁を安倍政権が掲げる成長戦略の象徴とする解禁派と、解禁で対面販売に影響が出る日本薬剤師会に配慮する規制派が対立している。
稲田朋美行政改革担当相(54)は記者会見で「最高裁判決にのっとった結論をお願いしたい」と規制派を牽制(けんせい)。田村厚労相は「安全性をしっかり担保しながらネットで売る方法を検討しないといけない」と述べ、ネット販売は安全性の担保が前提だと訴えた。
解禁派の政府高官は「ネット販売の全面解禁すらできないなら、安倍政権下の規制改革は何もできない。参院選で確実に不利になる」と規制派の姿勢に不快感をにじませた。
一方の田村厚労相は、安倍政権発足の昨年12月以降、生活保護費のカットや70~74歳の医療費窓口負担を1割に据え置く特例措置継続を決断するなど、官邸サイドの意向を尊重してきた。しかし、今回ばかりは「自民党を支持する薬剤師会や厚労族の意向もあり、全面解禁の要請には決して首を縦に振らなかった」(厚労省幹部)という。
薬のネット販売については、消費者側の意見も分かれる。
電通総研が3月に行った調査では、「市販薬のネット販売が開始されれば利用したい」と答えた人は8割に上る。しかし、薬害被害者らからは「市販薬のネット販売が経済の活性化にどうつながるのか」と疑問や不安の声もある。
「市販薬の市場は1兆円弱」「(最高裁の判決による事実上の販売解禁以降)医薬品の売り上げは5倍くらい上がった」
ケンコーコムの後藤玄利社長は6月4日、日本外国特派員協会で行った会見で、ネット販売の将来性を数字を挙げながらそう紹介した。
実際に、多くの消費者は市販薬のネット販売に抵抗はない。電通総研が全国の20~60代の男女2000人を対象に行った調査では、市販薬のネット販売に「賛成」は58.7%、「反対」は10.7%。77.2%が、ネット販売が解禁されれば利用したいと答えた。
ネットでなら購入したい市販薬には、ビタミン剤(10%)▽育毛剤(9.7%)▽漢方薬(9.5%)-などが挙がり、調査は「インターネットで市販薬が買えるようになれば、市場規模は最大2400億円拡大する」と結論づける。消費者の利便性向上に期待する声は大きい。
ただ、市販薬を「商品」として扱うことには疑問の声もある。薬害被害者の増山ゆかりさんは「どんなに技術が進もうと、医薬品は患者の体を使って有効性や安全性を確認するしかない」と薬の持つ危険性を指摘。「(製薬、販売会社は)消費者の安全より、利益優先に傾いてしまうことがある。経済活性化のためには、医薬品の販売環境まで規制緩和しなければならないのでしょうか」と疑問を呈する。
全国薬害被害者団体連絡協議会や日本薬剤師会、日本漢方連盟など6団体は4日、共同で会見を開き、それぞれの立場からネット販売解禁に反対の姿勢を表明。日本薬剤師会の生出泉太郎副会長は「医薬品(産業)が成長するということは、病気が増えるということ。それで経済成長が見込めるのか」と政府の動きを痛烈に批判した。
電通総研の調査では、気になる結果も出ている。消費者がネット販売に感じるメリットに、「店員に話しかけられない」(10.5%)▽「購入時に薬剤師・店員の商品説明を聞かなくて済む」(5.9%)-を挙げた点だ。市販薬のネット販売が解禁されれば利便性は増すが、同時に薬の安全性に対する意識を消費者に啓発する必要性も増すといえる。(SANKEI EXPRESS)
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【市販薬のネット販売をめぐる動き】
2002年11月 ケンコーコムが市販薬のネット販売開始
2009年2月 厚生労働省が1、2類のネット販売を禁じる
5月 ケンコーコムなどが東京地裁に提訴
6月 改正薬事法が施行、1、2類の販売禁止に
2013年1月 最高裁が「ネット販売禁止は違法」と判決
2月 厚労省がネット販売の新しいルールを議論する検討開始
5月 検討会が終了、ネット販売の適否判断せず