ニュースカテゴリ:EX CONTENTS
科学
運動しすぎはかえって有害 大和田潔
更新
何事もやりすぎは良くないようです。「マラソンはチーズバーガーと同類で健康に悪影響か」(ウォールストリート・ジャーナル2013年5月27日)といった記事が掲載されました。耐久レースのような激しい運動を繰り返すと、当初の運動による健康への良い影響が打ち消されてしまい、あまり健康的ではないチーズバーガーと同じぐらい健康を害するものになってしまうという記事でした。
一方で、クリニックの待合室用に取り寄せているランニング雑誌には、素人とは思えないほど走りこんでいる人たちが掲載されています。よく読んでみると、元陸上選手の方だったりするのですが、常人では行えないトレーニングを黙々とこなされている姿は尊敬に値するものです。そして彼らはとても健康的な生活を送られています。
国立がんセンターのコホート研究では、メタボで太りすぎはもちろん、やせすぎもまた寿命に悪影響を及ぼすという研究結果を発表しました。つまり、やせすぎも太りすぎも良くなくて、ある程度ぽっちゃりしている姿が最も長生きの傾向にあるという結果でした。
最初は肥満やメタボ対策のために走り始めたものの、走ること自体が目的になってしまう人もいます。日本人は勤勉で、まじめすぎる人が多く、「走るんだ」と決めたら、雨の日もカンカン照りの日も、少し具合が悪い時ですら走り続けてしまいます。走らないことがサボることにつながるように感じて、絶対に休んではいけないといった、強迫観念に近い焦りを感じてしまうのかもしれません。
冒頭の報道では、1週間に30マイル(約48キロメートル)以上のランニングをすると、運動のメリットが消えて有害にすらなるということが示されていました。週48キロメートルということは、月間200キロメートルぐらいの距離になります。市民ランナーでもこれぐらい走られている方は多いでしょう。けれども、運動で消耗あるいは憔悴(しょうすい)するようでは本末転倒です。
レースで人よりも速く長く走るといった比較ではなく、どれだけ健康に長生きするかという「人生のマラソンに勝つことが大切」と、私は患者さんに説明しています。健康に良い食事と効率的で適度な運動を、スマートに心がけることにしましょう。(秋葉原駅クリニック院長 大和田潔/SANKEI EXPRESS)