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政治
「非共産」野党がだらしない 国民にとってこの上なく不幸
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戦国策(燕策)の故事にある「鷸蚌之争(いつぼうのあらそい)」とは、二者が愚かな争いをしているところを、第三者の食い物にされてしまう無益の争いのことをいう。
7月21日投開票の参院選は「自民党圧勝」が揺るぎない情勢である。理由のひとつは、民主党や日本(にっぽん)維新の会、みんなの党といった野党がまさに不毛の鷸蚌之争を繰り広げたきたためだ。
しかし、ほとんどの選挙区で自民党の独走を許す「民維み」が「敵は本能寺にあり」よろしく、攻撃対象を与党ならぬ日本共産党にシフトさせている風景はおぞましい限りである。これぞ「日本政治の危機」と言っていいだろう。
参院選で、この「革命政党」が2001年以来、12年ぶりに選挙区での議席を獲得する可能性が出てきた。ここ何年もの間「党勢後退」が枕詞(まくらことば)となっていたこの党の指導部が欣喜雀躍(きんきじゃくやく)するのも無理はない。6月の東京都議選で1997年以来、16年ぶりに議席を増やし「野党第一党」に躍り出た。2000年の志位和夫委員長(58)-市田忠義書記局長(70)体制発足後、国政選挙と準国政選挙たる都議選で後退を続け、「連戦連敗」を更新中だった。選挙後、毎度のように志位氏は頭を下げてきた(もっとも共産党にはトップが選挙の敗北の責任をとって辞任する“文化”はないが…)。都議選は志位・市田体制下での「初勝利」をもたらしたのだ。小躍りする志位氏はこう訴える。
「日本の政治はこの十数年間の『二大政党の政権選択』と『第三極』作戦という、日本共産党排除の2つの反共作戦を経て『自共対決』の時期を迎えている。反共作戦が破綻するのは古い自民党政治の土台が腐りきっているからだ。日本共産党の躍進は、2つの反共作戦を打ち破ってきた闘いの到達だ」
だが共産党が「実力」で都議選躍進を果たしたわけではない。朝日新聞は「護憲・反原発の訴えが届いた」としたり顔で解説するが、見当違いも甚だしい。
得票数は約62万票で前回は71万票。得票率は今回は13.61%、前回は12.56%だった。わずかな得票率のアップで議席を倍増させたのは「普通の野党」が票を奪い合った結果、共産党が相対的にそれを上回り当選ラインが下がったためだ。
自公はイヤで、民主もこりごり。維新もダメ。こうなりゃ共産に入れるしかない-。都議選の投票率は43.50%で前回比10.99ポイントも低くなったのは、松本正生埼玉大学教授(政治意識論)が言う、無党派層ならぬ「その都度支持層」の多くが選択肢を失って棄権した要因が大きいだろう。投票率低下が固定支持層を持つ共産党を押し上げる一方、投票所に足を運んだ「その都度支持層」の一部が仕方なく共産党に入れたという事情もあるのだ。政界関係者はこう分析する。
「昨年末の衆院選で維新を支持した人が都議選で共産党に流れたケースが多かった。“右”から“左”への急旋回だが、そうした人はインテリ層によく見られる。むろん政策で共産党を支持したわけではなく、自公や民主、維新に対する不満票の受け皿となっただけ。まさか共産党が政権をとれるわけがないという判断も、そうした投票行動につながった」
「自民への対抗軸」として期待された野党が自滅すれば、共産党が瞬間風速的に浮上することは、この国の選挙の歴史がたびたび証明している。
巨大与党化する自民党と、自衛隊や象徴天皇制すらはっきりと「是」とはしない共産党-。この党が叫ぶ「自共時代」なる、いびつな政界構図を「平成の55年体制」と書いた夕刊紙もあったが、こんな状況はとんでもないことだ。
天皇陛下をお迎えする国会の開会式をボイコットし、何でも「与党に反対」と吠えているだけの革命政党が、非自民・反自民の主役になれば、自民党にとっては事実上の「敵なし」で、こんな好都合なことはない。「非共産」野党がだらしなさすぎることは国家、国民にとってこの上なく不幸なことなのである。
しかし無節操に共産党になびく「その都度支持層」にも敢えて言う。いいかげん目を覚ませ、と。(高木桂一/SANKEI EXPRESS)