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政治
明るく方向示せば雲も晴れる
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「而(しこう)してカルタゴは滅ぼさねばならぬ」。共和政ローマの元老院議員、カトーはどんな演説でもこう締めくくったとされる。カトーの主張が認められ、第三次ポエニ戦争を経てローマは地中海の完全な覇者になり、ヨーロッパ、小アジア、アフリカにまたがる大帝国の基礎を築く。余談ながら、個人的にはアルプス越えのハンニバル贔屓(びきき)なのでカトーにはいささかの思いもあるが、それはさておき、政治家が信念を込め、国の方向性を示すのは転換期には非常に重要なことだ。
「半世紀ほど前の本日、10月1日。東海道新幹線は開業した。そしてその10日後、東京オリンピックが開会された。がんばる人は報われる。みながそう信じていた時代だ」
安倍晋三首相は1日夕、こう切り出して消費税増税を発表した。
首相は就任以来、しばしば演説で高度経済成長期に言及する。今日よりも明日は良くなると信じて日本全体が無我夢中だったといい、「当時の日本人にできて現在のわれわれにできないはずがない」と奮起を促している。
2020年東京五輪に成功し、重く垂れ込める雲のような閉塞(へいそく)感は、ところどころとはいえ切れ間から“青空”をみせるようになってきている。トップリーダーが明るく、強い信念を持って方向性を示すメッセージを繰り返せば、流れは変わる。暗い表情で暗い未来ばかりを語られては、縮み志向が増すばかりだ。
ところで、記者会見の首相の発言のなかで気になる部分があった。
「長いデフレの間に、企業は投資や従業員への還元を行わずにずっとお金をため込んできたという状況が続いた。だからこそのデフレの脱却だ。投資したり、しっかり社員に還元しなければ
それらの発言を聞いて、ある政府関係者の話を思い出した。その人物は成長戦略など経済政策の立案に携わる一人だが、「あれこれ政府が対策を講じても最終的には民間がやる気を起こすかどうかの一点だ」と言った。
「馬を水辺に導くことはできるが、水を飲ませることはできない」というように、サラリーマン経営者が失敗や株主を恐れて動き出さないと、減税などの経済対策の効果も薄い。
では、投資や研究開発を行ったり、それなりに社員に還元したりするようにするにはどうしたらいいだろうか。その政府関係者は即座に、「投資や賃上げをしないのはどんな経営方針に基づくものなのか、内部留保を増やすのはどんな経営計画に基づくものなのか、説明できない場合は減税しない、あるいは余分に課税するようにすればどうか」と答えた。
もちろん事業計画などは企業秘密だ。普通の資本主義社会ではちょっとあり得ない“極論”だろう。また業績が上がっても賃上げしない企業は社名を公表するという“罰則”を検討してみてはどうかという声もあるという。こうした極論がささやかれるのも、政権が強い意思を持って臨んでいる表れのように思える。
もうひとつ、強い意志を持って取り組んでほしいのは、国会が率先して姿勢を示すという“公約”だ。これも政治は責任を持って定数削減を含む選挙制度改革を進めてほしい。このことは以前に当欄(8月24日付)でも書いたが、カトーのひそみにならって、繰り返すことをお許しいただきたい。(佐々木美恵/SANKEI EXPRESS)