SankeiBiz for mobile

【台風26号】避難勧告発令されず被害拡大 伊豆大島で土石流

ニュースカテゴリ:EX CONTENTSの社会

【台風26号】避難勧告発令されず被害拡大 伊豆大島で土石流

更新

 伊豆大島で、土石流による死者・行方不明者が多数出たのはなぜなのか。火山や台風などの災害に詳しい専門家らの指摘からは、長年にわたる三原山の噴火活動で形成された火山灰中心のもろい地質と、記録的豪雨とが重なった複合的な要因に加え、行政対応の問題点などを指摘する声があがった。

 複数要因重なり…

 気象庁によると、伊豆大島の大雨の要因は、台風26号の進路に島がぶつかったことに加え、26号の接近に伴ってできた前線が、10月15日夜から16日未明にかけ、伊豆大島から房総半島に停滞したことにある。

 前線は南から吹き込む暖かく湿った空気と陸側の冷たい空気がぶつかってできる。今回は台風が暖かく湿った風をもたらし、勢力が強く広範囲だったため積乱雲が発達、激しい雨を降らせやすい「明瞭な前線」(気象庁担当者)になった。

 さらに伊豆大島の南海上は、それまで台風が進んできた進路を北西から北東に変える「転向点」にあたった。付近では速度が落ちるため雨雲がとどまりやすい。気象庁の松本積(つもる)予報官(55)は「伊豆大島は周囲が海で遮るものがなかった分、本州よりも発達した雨雲の影響を受けやすかった」と話す。

 火山特有の地層

 大雨は島内に巨大な土石流を発生させ、西部沿岸部を中心に大きな被害をもたらした。独立行政法人土木研究所(茨城県つくば市)の石塚忠範(ただのり)上席研究員(50)は「24時間で800ミリを超える雨が降れば、どこで土砂崩れが起きてもおかしくない」とした上で「被害拡大には伊豆大島特有の地質が影響した可能性がある」と指摘する。

 火山である三原山によって作られた伊豆大島の地層は、過去の噴火で発生した溶岩流や火山灰が積み重なってできた。こうした場所には水を通しやすい地層や、通しにくい地層ができることがあり、地層の境目では土砂崩れが起きやすい。崩れた土砂が川などに流れ込み、水と一緒に下っていくと土石流になる。

 石塚研究員は「昨年7月の九州北部豪雨の際、阿蘇山(熊本県)の斜面でも土砂崩れが発生していた。、映像で見る限り、今回も火山周辺特有の現象が生じた可能性がある」と話した。

 夜間の誘導に課題

 伊豆大島の大島町は台風26号が襲来しても住民に避難勧告や避難指示は出さず、防災無線での注意にとどめた。行政対応も被害を拡大させた可能性がある。

 勧告や指示は、災害時や災害発生の可能性がある場合、住民に安全な場所への避難や屋内待避を求める措置で自治体の首長が発令。町によると、雨が強くなり始めた15日深夜、勧告や指示を出すか検討したが見送った。理由について川島理史町長は「激しい風雨で深夜の1時や2時に勧告すれば被害を増やす恐れがあった」と説明。16日午前3時半ごろに初めて、防災無線で「沢が氾濫し始めているので注意を」と呼びかけるのにとどめた。

 課題が残った夜間の避難誘導。群馬大の片田敏孝教授(52)=防災学=は「10年に1度の規模の台風であることは気象庁も事前に周知を図っており、夜にかけて状況が悪くなることは予想できた」と指摘。「夜間は二次被害の危険性も高まり、街灯もない地域での避難誘導は困難を増す。雨が激しくなって発令の検討を始めるのでは遅く、台風が本格襲来する前に早めに避難勧告を出すべきだった」としている。(SANKEI EXPRESS

 ■伊豆大島 東京都心から約120キロの太平洋上に浮かぶ、伊豆諸島北部にある島。伊豆諸島で最も大きく、南北約15キロ、東西約9キロで、面積は約91平方キロ。島全域が東京都大島町で、人口は今年9月末現在で8365人。島中央には火山の三原山(758メートル)がある。2010年に日本ジオパークに認定された。温暖な海洋性気候で、首都圏のリゾート地として親しまれている。

ランキング