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【台風26号】救助阻む土砂…「とにかく無事で」 伊豆大島で土石流

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【台風26号】救助阻む土砂…「とにかく無事で」 伊豆大島で土石流

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 生存者を捜す人々の叫び声が響いた。「誰かいませんかー」。台風26号により甚大な被害が出た東京・伊豆大島の大島町元町地区では10月16日、懸命の捜索が夜になっても続いた。濁流が家々をのみ込んだ現場では、毛布にくるまれて遺体が運び出された。泥の中から住民の持ち物らしきものが出ると手袋で丁寧に拭い、1カ所に集めた。

 沢沿いの住宅が跡形もなく流され、流木や土砂が積み重なった一角。正午すぎ、5メートルほどの高さまで積み上がったがれきの山で、女性とみられる人の顔や腕がのぞいているのを見つけた住民が「あそこに人がいます!」と叫んだ。

 近くで捜索活動に当たっていた地元の男子高校生、沢田弘夢さん(18)が両手で必死に土砂をかき分ける。近くにいた消防団員らも加わり、約10分後に泥だらけの女性を何とか引き出した。しかし、その体は既に冷たくなっており、毛布にくるまれ、運び出された。

 午後2時20分、陸上自衛隊練馬駐屯地から派遣された約50人が、十数軒の家屋が土砂にのまれた場所で捜索を始めた。横一列に並び、スコップや棒を使って掘り起こした。大量の土砂が堆積し、流れてきた樹木が幾重にも折り重なる。

 「誰かいないか」。樹木をずらし、何度も声を掛けながら土砂の山を徐々に崩していった。「こっちを先に動かそう」「せーのっ」「もう一回」。互いに声を掛けながら木の幹をどける。根が複雑に絡まり、10人がかりで引っ張ってびくともしないものも。歯を食いしばり、噴き出す汗を何度も拭った。警視庁も救助犬2頭を投入し、生存者を捜した。

 岩田桂子さん(72)は昔の職場の上司の安否を確認しに救出現場に駆けつけた。上司は定年後、町議などを務め、2年前からは自宅隣で喫茶店を開き「あとは余生を自由に楽しむだけ」と話していたという。上司の自宅は流され、行方は分からない。岩田さんは「とにかく無事で見つかってほしい」と救出作業を見守った。

 日没前、近くのがれきの中から、1人の子供が発見された。幼い女児とみられる。すでに息はなく、地元消防隊員が遺体を毛布にくるみ優しく抱えた。警視庁の車で遺体が運ばれる前、隊員らは手を合わせ、1人が頭をそっとなでた。「何でこんなことになったのだろうね」。救出活動を見守り続けた住民はタオルで顔を覆った。

 ≪「流される」暗闇の中、柱にすがる≫

 轟音(ごうおん)とともに大量の土砂が室内に流れ込み、部屋の柱に必死でしがみつく-。被災者の証言を基に、当時の状況を再現した。

 大島町元町地区の阿部吉恵さん(80)は午前3時前、自宅に土砂が流れ込み身体が5メートル近く流されたが、部屋の柱にしがみついた。「真っ暗だった。もう駄目かと思った」

 夫の久左志さん(83)は吉恵さんの悲鳴で目が覚めた。「流される」。起き上がろうとしたが体が動かない。布団の上には土砂が。「大丈夫かー」。必死に叫ぶ。「大丈夫」と吉恵さん。

 「助けを待とう」。2人はめちゃくちゃになった部屋のテーブルの上に座り、身を寄せ合いながら夜明けを待った。

 氾濫した川のすぐそばに住む藤井勝夫さん(88)は、妻と自宅で寝ていたら「ドーン」という音とともに水が入ってきた。ベッドが水で浮き上がる。妻の手を引き、水をかき分けて、やっとの思いで玄関へ。ドアをこじ開け、隣に住む被害のなかった孫の家に逃げた。(SANKEI EXPRESS

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