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戦略特区 再開発促進、雇用緩和は見送り 省庁反発で「踏み込み不足策」
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政府は10月18日、日本経済再生本部会合を開き、地域を限定して規制を緩和する「国家戦略特区」の具体策を決めた。
2020年の東京五輪に向け大都市中心に高層マンションなどの建築規制を緩めて再開発を促すことや、公立学校運営の民間委託を認めることなどを盛り込んだ。焦点だった雇用分野では、経済界から要望が強かった「解雇ルールの明確化」などを見送った。
安倍晋三首相は会合で「世界と戦える国際都市形成のために必要な制度改革の方針を整理できた」と強調。甘利明(あまり・あきら)経済再生担当相は「(開催中の)臨時国会で関連法案を早期に提出する」と説明した。来年1月をめどに個別地域を選ぶ見通しだ。
具体策は▽「医療」▽「雇用」▽「教育」▽「都市再生・まちづくり」▽「農業」▽「歴史的建築物の活用」の6分野で構成。
医療では、病院の規制も緩めて病床を増やしやすくするほか、外国人医師の業務拡大や医学部の新設も検討する。雇用分野では「解雇ルールの明確化」は取り下げたが、外資系企業などでトラブルが起きないよう「雇用労働相談センター(仮称)」の新設を盛り込んだ。
≪省庁反発で「踏み込み不足策」≫
政府が10月18日、規制緩和の具体策を決めた国家戦略特区は安倍晋三政権の成長戦略の目玉に位置づけられる。だが、その内容は雇用規制の大幅な緩和が見送られるなど踏み込み不足との見方も多い。「世界で一番ビジネスがしやすい環境を創出する」との目標を達成できるかどうかには疑問符が付くのが現状だ。
安倍政権の経済政策「アベノミクス」の第3の矢になる成長戦略では、地域限定で規制を緩和する国家戦略特区を活用し、雇用や農業、医療などの「岩盤」と呼ばれる厚い規制をどこまで突き崩せるかが焦点になっていた。
しかし、これまでに政府の特区の作業部会が示した案の多くは、省庁の反発などで変更を余儀なくされ、今回の規制緩和メニューには「全体として小粒の印象は否めない」(日本総研の山田久調査部長)との冷めた見方が多い。
雇用分野では、経済界が求めていた解雇規制の緩和などが見送られた。
有識者で構成する作業部会は特区内の企業と労働者の間で解雇の条件や手続きを事前に労働契約で決めておけば、解雇をめぐる裁判でも契約に基づいた解雇を有効とするよう提案した。
日本の規制が海外に比べて厳しく、企業が柔軟に人材を集めることを難しくさせ、成長分野への人材の移動を阻害しているとの問題意識があるためだ。
これに対し、厚生労働省が「雇用ルールを特区だけで変えるべきではない」と反対したほか、野党や労働組合も「解雇特区だ」と激しく反発。最終的に、当初案からは大きく後退し、外国企業など向けに雇用ルールを明確にしたガイドラインをつくり「雇用労働相談センター(仮称)」を設置するなどにとどまった。
雇用以外でも、農業分野では、企業による農地保有の拡大などは明確に盛り込まれなかった。医療分野も保険診療と保険外診療の併用を認める「混合診療」の拡充は医薬品関連などごく一部に限られる。
産業界では、「全体のバランスを見た上で特区の効果を見守りたい」(経団連)と静観の構えだが、過去には小泉純一郎政権での「構造改革特区」を含めて何百もの特区が量産されてきたが、実績を示せず事実上消滅したものもある。
政府は今後も「いいアイデアがあれば、どしどし取り入れていきたい」(甘利明経済再生担当相)考えで、企業や自治体の知恵をどう引き出していくかが今後の鍵を握る。(SANKEI EXPRESS)