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国際
中露が弄ぶ対日歴史カード
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インドネシアのバリ島で10月7日に中露首脳会談が行われた。マスメディアが入った会談冒頭部分の記録がこの日、露大統領ウエブサイトで公表された。
中国の習近平国家主席がプーチン露大統領に、こんなことを述べた。
「(9月13日に)ビシュケク(キルギスの首都)で行われた上海協力機構首脳会合で、あなたは2015年にわれわれが一緒に第二次世界大戦勝利70周年を記念しようと提案しました。私は、中国とロシアが合同でわれわれの共通の勝利を記念してこの祝日記念行事を行うというあなたの提案に賛成します。本件に関して、できるだけ早くこの重要な行事の準備に取りかかることができるように、両国の担当省庁に命令する必要があると思います。
われわれは、この行動は大きな長期的意義を持つと考えています。問題は、この戦争の年月にロシアとロシア人民、中国とわが人民は、われわれの共通の勝利のために大きな犠牲を出したことです。ロシアは、勝利を苦しみの末に得て、反ファシスト戦争の勝利において多大な貢献をしました。この戦争でロシアはわれわれに多大な支援を行いました。わたしたちはこのことを決して忘れません。
今日、世界の政治と経済においてアジア太平洋地域の役割が大きくなっていることを背景に、中国側は、ロシアがこの地域におけるプレゼンスを続け、さらにこの地域発展における顕著な役割を果たすことに関心を持っています。この計画において、われわれはアジア太平洋地域におけるロシアとわれわれの協力とインターアクションを一層強化する用意があります」
露大統領ウエブサイトには、習国家主席の発言に対してプーチン大統領がどのような反応を示したかについては記されていない。
日本が反ファシズム戦争の結果を否定しようとしているという論理で、中国は尖閣諸島に対する日本の実効支配を切り崩そうとしている。習国家主席は、マスメディアがおり、世界にニュースが報道されることを念頭において、この発言を行った。特に、プーチン大統領が9月13日の上海協力機構の首脳会合で、中国側に反ファッショ戦争勝利70周年記念の合同式典を行うと提案した事実を強調し、国際社会に対して「日本を挑発するような行事を中国側から仕掛けているのではない」という釈明ができるような仕込みをしている。
従来、中国は第二次世界大戦を日本軍国主義に対する戦争と規定していた。それを戦後65周年にあたる2010年頃から、反ファッショと言い換え、ソ連、米国とともに中国も、ドイツ、イタリア、日本などのファッショ陣営に対する戦争に連合国の一員として参加したという物語の構築を始めた。実際は、米ソとともに連合国の一員として参加したのは中華民国だ。現在の中華人民共和国は、中華民国との連続性を否定している。それだから、現在の中華人民共和国が、米ソの同盟国だったという物語には無理がある。しかし、中国の歴史カードを用いた外交攻勢は一定の成果をあげている。
ロシア外務省の中にも第二次世界大戦で南クリル(北方領土に対するロシア側の呼称)は合法的にソ連に移転したので、日本の領土返還要求を拒否すべきだと主張する強硬派がいる。このような勢力は、バリの中露首脳会談における反ファッショ統一戦線という物語を、北方領土交渉を混乱させる目的で利用するであろう。
歴史カードを用いた中露連携を切り崩すロビー活動が、日本にとっての焦眉の課題だ。モスクワの日本大使館員、特に原田親仁(ちかひと)大使によるクレムリンへの働きかけが決定的に重要になる。(作家、元外務省主席分析官 佐藤優/SANKEI EXPRESS)