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オランダ外交官襲撃 露秘密警察の「警告」か

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オランダ外交官襲撃 露秘密警察の「警告」か

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 【佐藤優の地球を斬る】

 ロシアとオランダの関係が急速に悪化している。10月17日付産経新聞に掲載されたモスクワからの佐々木正明記者の記事が興味深い。

 互いに注文付け合う

 <ロシアとオランダの関係が冷え込んできた。オランダに本部を置く国際環境保護団体グリーンピースの活動家ら30人が9月下旬、ロシアの油田開発への抗議活動を行ったとして拘束されたのに続き、両国に駐在する双方の外交官が事件に巻き込まれるなどして、両国政府が互いに注文を付け合う事態となっている。

 今月(10月)15日夜、モスクワ中心部にあるオランダの外交官(60)宅に2人組の男が電気工事の修理を装って侵入し、外交官を殴って逃走した。インタファクス通信が伝えた。オランダのティメルマンス外相は16日、声明で露政府に外交官の安全確保を要請した。

 オランダでは今月(10月)初旬、警官がロシアの外交官を誤って拘束して連行する騒ぎがあり、プーチン大統領の謝罪要求にオランダ政府が応じた直後のことだった。

 モスクワで殴られたオランダの外交官に大きなけがはなかったが、犯人は外交官宅の壁に、同性愛者ら性的少数者をさす「LGBT」の文字を描いて逃走したとみられている。

 ロシアでは今年、同性愛を社会で広める行為を禁じる法律が施行されており、同法を支持する者による犯行の可能性を指摘する声もある。8月には、ロシア国内で同性愛者の権利に関するドキュメンタリーを撮影していたオランダ人が、この法律に違反したとして拘束される事件も起きた>

 行動改めるまで段階的に

 このモスクワでのオランダ外交官襲撃事件には、「プロの手口」を感じる。ロシアの秘密警察(FSB=連邦保安庁)は、モスクワに勤務する外交官の活動に不満がある場合、段階的に警告を与える。

 まず、家に帰ると、部屋に掛けている絵画の位置が変わっているとか、灰皿に身に覚えのない吸い殻があるとかいう実害のない警告だ。それでも外交官が行動を改めない場合、冷蔵庫のコンセントを抜く、車をパンクさせるなど、若干の実害がある警告になる。

 それでも外交官が、ロシア当局にとって不愉快な行動を取っていると、もう少しレベルの高い警告に切り替わる。ウィーン条約で外交官の身体、住宅は厳重に保護されている。それであってもロシアの秘密警察は、必要になれば、外交官を殴るくらいの警告は平気で与える。筆者も外交官時代、交通警官を装った秘密警察関係者に殴られたことがあるので、このことは皮膚感覚でよくわかる。

 もっとも北方領土問題で、筆者がロシア当局を刺激するロビー活動を行い、当局の警告を無視していたので、殴られる理由はあったが。

 仮に同性愛者の人権擁護に反対するロシアの右翼勢力がこの襲撃を行ったとするならば、オランダ外交官にけがをさせ、かつ室内を本格的に破壊したと思う。抑制された暴力を行使できるのは、暴漢が「その道の専門家」だからだ。

 屈することなく活動継続

 恐らくこのオランダ外交官襲撃事件は迷宮入りする。それと同時に、今後、オランダ以外の外交官に対しても、ロシア当局からグリーンピースやLGBTを支援していると見なされる行動をとれば、同様の「警告」が与えられるであろう。ただ、今回の襲撃のような警告を受けてもオランダ外交官はロシアの反体制派支援を止めないと筆者は見ている。それが外交官としての仕事だからだ。

 北方領土問題に関してモスクワの日本大使館員がロビー活動を展開する際も同様の危険がある。しかし、こういうときにおびえていては、ロシアの秘密警察からなめられるだけだ。命までもっていかれることはないので、こういうときにこそ積極的に日本の国益に資するロビー活動を展開してほしい。(作家、元外務省主任分析官 佐藤優/SANKEI EXPRESS

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