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角にチップ 密猟ルート追跡 ケニア、サイ全頭対象 闇取引が急増

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角にチップ 密猟ルート追跡 ケニア、サイ全頭対象 闇取引が急増

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 その角が万病に効くとして珍重され、密猟が激増しているアフリカのサイを守るため、ケニアの自然保護当局が、国内に生息する1000頭以上のすべてのサイの角にマイクロチップを埋め込む作戦に乗り出した。この数年、ベトナムや中国などの富裕層の間で角の粉末の人気が高まっており、闇市場では最高で1キロ当たり約10万ドル(約970万円)と、純金よりも高額で取引されているという。ケニア当局は、角に埋め込まれたチップを動かぬ証拠として突き付け、背後にいるとみられる国際的な密猟・密売組織を壊滅させることを狙っている。

 国際的組織 暗躍か

 「密猟者の手口はより巧妙になっている。野生動物の殺戮(さつりく)に対抗するためには、保護する側も、より高度なハイテク技術の導入が不可欠だ」

 ケニア野生生物公社(KWS)は10月17日に発表した声明で、密猟根絶の強い決意を示した。

 欧米メディアの報道によると、ケニア国内では現在1030頭の野生のサイの生息が確認されている。作戦には世界自然保護基金(WWF)が協力し全頭分のチップとチップのデータを読み取る5台のスキャナーにかかる費用約1万5000ドル(約148万円)を寄付した。

 広大なサファリで1頭ずつサイの居場所を特定して捕獲し、約5センチのチップを埋め込んでいく。WWFの東南アフリカ地域の広報担当者、ロバート・マゴリ氏は米CNNテレビに「全頭へのチップの取り付けには約4カ月かかる。多くの労力、費用がかかる作業だ」と説明した。

 サイの密猟は、軍用ヘリや夜間用の特殊兵器などを使って大規模に行われており、国際的な密猟・密売組織の存在が指摘されている。KWSは声明で「押収された角のチップから密猟事件を特定できるようになれば、裁判での決定的証拠になる」と説明。チップを埋め込んだサイのDNAデータと照合し密猟現場を特定することで密猟組織の追跡や密売ルートの解明につながると期待している。

 「がん治った」で急騰

 アフリカではサイの密猟が危機的な水準にある。NGOの国際自然保護連合(IUCN)によると、2012年に犠牲となったサイは、前年から43%増え、この20年間で最悪の745頭に上った。さらに、ロイター通信によると、南アフリカでは今年初めから9月末までだけで704頭が殺され、過去最悪だった昨年の668頭をすでに上回った。

 米ニュースサイト、アトランティックによると、密猟急増は、数年前にベトナムである政治家がサイの角の粉末でがんが治ったという噂が流れたのがきっかけになったという。ベトナムでは角の粉末を推奨する医師まで現れ、富裕層がこぞって買い求めるようになった。

 中国では古くから解熱や肝疾患に効くとされ、漢方薬の材料として珍重されていた。1990年代に伝統的薬種から除外されたことから需要が減り、取引価格も250~500ドルに下がっていたが、ベトナムでの人気を受け高騰しているという。

 サイの角1本の重さは1~3キロあり、闇市場での取引価格は1キロ当たり2万ドルから最大10万ドルと伝えられている。医学的に何ら根拠のない噂によって、サイたちは絶滅の危機に瀕しているのだ。(SANKEI EXPRESS

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