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社会
みずほ暴力団融資 OB含め54人処分 2トップ留任 信頼回復険しく
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みずほ銀行の佐藤康博頭取(61)は10月28日、東京都内で記者会見し、暴力団関係者らへの融資を放置していた問題の責任を明確にするため、OBを含む54人の処分を発表した。佐藤頭取は「経営陣は深く反省している」と謝罪したが、自身の進退については「辞任を考えたことはない」と明言。塚本隆史会長(63)は辞めるが、持ち株会社みずほフィナンシャルグループ(FG)会長にはとどまる。
佐藤氏と塚本氏はいずれも報酬を半年間ゼロとする。2012年度の佐藤氏と塚本氏の報酬はいずれも1億1600万円。経営トップ2人が残留し、処分後も多額の報酬を受け取ることになる。こうした処分内容が妥当かどうか議論を呼びそうだ。みずほ銀行は28日、社内処分や再発防止策を盛り込んだ業務改善計画を金融庁に提出した。
「妥当だと思うが、非難も認識している」。佐藤頭取は会見で、自身の報酬カットも含む社内処分をこう総括した。
これに先立ち、みずほ銀行は28日午前、暴力団関係者らへの融資を放置した問題で、第三者委員会(委員長・中込秀樹弁護士)の調査報告書を公表した。グループの信販会社オリエントコーポレーション(オリコ)を経由した融資だったため「自行の債権という意識が希薄だった」と指摘し、抜本対応を怠ったと断じた。問題を把握した西堀利・元頭取ら歴代3頭取間で引き継ぎがなかったことも融資が放置された原因と認定した。
東日本大震災後のシステム障害で問題を把握した西堀氏が引責辞任し、混乱のなかで「問題が組織上継承されなかった」とした。ただ特定の暴力団との癒着はなかったと明記した。
金融庁検査で「情報は担当役員止まり」と事実と異なる報告をしたことについては「隠蔽(いんぺい)の意図は認められない」と指摘したが、十分な確認をせず回答したことは「軽率だった」と厳しく批判した。
≪根強い旧行意識 反省行かされず≫
みずほ銀行の暴力団関係者らへの融資を調べてきた第三者委員会は、10月28日公表した報告書で甘い企業体質を厳しく指弾した。反社会的勢力排除をめぐりみずほ銀行はかつて総会屋への利益供与事件やフロント企業への顧客情報流出などの問題を起こした。そのたびに再発防止を誓っただけに、会見した佐藤康博頭取の「もう一度原点に立ち返り、強いグループを再生する」との宣言はむなしく響く。信頼回復への道はあまりに険しい。
「社会の範たるべき日本を代表する銀行として問題性は軽視できない」「組織として問題を看過する態勢に陥っていたことに重大な問題がある」
第三者委の報告書には、みずほ銀行の組織を批判する言葉が並んだ。それでも、28日の社内処分でトップにとどまる佐藤頭取は、「この問題で辞任する考えを持ったことはない。グループ再生に私が全身全霊で取り組む」と言い切った。
思い起こすのは過去の不祥事だ。みずほ銀行前身の旧第一勧業銀行で1997年に発覚した利益供与事件では、当時の頭取が「背景に組織上、風土上の問題があった。再発防止に万全を期す」と力説。2006年にフロント企業への顧客情報漏洩(ろうえい)で行員が逮捕された事件でも、「内部管理体制の一層の充実強化を図る」(報道発表文)と宣言した。
それでも再び、内部管理や社内制度に起因すると第三者委に批判される問題を引き起こした。みずほ銀行は再発防止策を金融庁に提出したものの、あるメガバンク幹部OBは「これまでの再発防止策と何が違うのか」と疑問を投げかけた。
行内にも首脳陣の対応に不満がくすぶる。「またD案件に足を引っ張られた」。「D」は前身の旧第一勧銀の頭文字。提携ローンを扱った信販会社オリエントコーポレーションは歴代社長が第一勧銀出身者で、利益供与事件に続き問題の発端となったことに、特にリテール(個人)分野に強い旧富士銀関係者から恨み節も漏れているという。報告書で指摘された「役職員の退任・異動にともなう断絶」や「部署間のコミュニケーション不足」は、旧行意識の垣根が背景にあるとの見方がぬぐいきれない。
みずほ銀行が取り組む銀行本体の社外取締役の導入などは他行は導入済み。「何にしても遅れている感がある」(金融関係者)とささやかれるみずほ銀行は信頼回復に向けたスタートラインに立ったにすぎず、混迷は尾を引きそうだ。(塩原永久/SANKEI EXPRESS)
・信販会社を通じた融資で、暴力団関係者が融資先であるという意識が希薄だった
・組織として見過ごす体制に陥っていたことが重大な問題
・東日本大震災直後の大規模なシステム障害の混乱で、問題が組織上継承されなかった
・事態を引き起こした態勢の問題性は軽視できない
・暴力団関係者との間に人的な癒着が生じることは考えられない
・金融庁検査での事実と異なる報告に隠蔽の意図は認められないが、対応は軽率だった