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首相トルコ訪問 海峡地下鉄開通「友情のシンボル」 インフラ輸出 「30兆円」へ後押し

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首相トルコ訪問 海峡地下鉄開通「友情のシンボル」 インフラ輸出 「30兆円」へ後押し

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 トルコを訪問中の安倍晋三首相(59)は10月29日午前(日本時間29日夜)、アジアと欧州をつなぐボスポラス海峡の地下鉄開通式典に出席。式典に先立ち、28日午後(日本時間29日未明)に開かれた会合では「日本とトルコの協力で達成された歴史的偉業だ。両国の友情のシンボルとなり、両国が友好関係を発展させることを期待したい」と述べた。

 安倍首相は式典後、アブドゥラー・ギュル大統領(63)と面会し、29日夜(日本時間30日未明)にはレジェップ・タイイップ・エルドアン首相(59)と会談。日本・トルコ経済連携協定(EPA)交渉の速やかな開始に向けた協議を行うほか、三菱重工業を含む企業連合が受注した原発建設計画について、正式受注に向けた最終的な後押しを行う。

 トルコの隣国シリアの情勢について難民らへの人道支援に引き続き取り組む考えを表明。2020年東京五輪への協力も求める。(イスタンブール 豊田真由美/SANKEI EXPRESS

 ≪インフラ輸出 「30兆円」へ後押し≫

 日本がインフラ(社会基盤)輸出の促進に向けてアクセルを踏んでいる。トルコ最大の都市イスタンブールでは10月29日、日本の建設大手の大成建設が海底トンネル工事を担当した地下鉄が開通。安倍政権はインフラ輸出の拡大を成長戦略の柱に掲げており、日本企業が強みとする高度な技術やノウハウを生かして経済発展の続く新興国などにインフラを売り込み、商機拡大を支援する。ただ、インフラ輸出は中国や韓国なども国を挙げて取り組んでおり、日本は官民連携の一段の加速や事業リスクの軽減策が課題となりそうだ。

 高い技術力アピール

 イスタンブールをアジア側と欧州側に二分しているボスポラス海峡。トルコ訪問中の安倍首相は29日午前、この海峡を海底トンネルで横断する地下鉄の開通式典に出席。インフラ輸出を拡大させる上で、日本企業の高い技術力を自らアピールする狙いだ。

 トンネルは総延長約13.6キロで、大成建設とトルコの建設会社2社の共同事業体が2004年に着工し、11年に貫通。この区間で今回、地下鉄が開通した。大成建設の山内隆司社長はイスタンブールで記者団に対し「今後も技術の強みを生かせる案件に的を絞り、海外でのプロジェクトに挑戦したい」と強調。安倍首相が首脳外交で他国との経済関係を強化しようとしていることにも「民間企業にはありがたい」と述べた。

 トルコではこの海底トンネル以外にも大型のインフラ事業がめじろ押しで、参画する日本企業も多い。IHIはトルコ西部で全長約3000メートルの世界有数のつり橋を建設中。他にも運河や新空港などの計画が控える。

 日本にとっては、トルコ市場の有望さが魅力といえる。人口が7000万人以上で1人あたりのGDP(国内総生産)が1万ドルを超える国は、世界で日本と米国、ドイツ、ロシア、ブラジル、トルコしかない。現政権は共和国建国100周年にあたる23年に向け、世界経済の上位10位入りする目標を掲げており、進出を検討する日本企業も多い。

 安倍政権は6月に閣議決定した日本再興戦略で、20年には日本企業による海外でのインフラ受注額を現在の3倍にあたる約30兆円に引き上げる計画を盛り込んだ。首脳ら閣僚が先頭に立つ「トップセールス」も毎年10件以上行うとした。

 官民連携が課題

 ただ、インフラ輸出をめぐっては経験や実績の豊富な欧米に加え、新興国である中国や韓国も本腰を入れている。激しい受注合戦を勝ち抜くには、中韓勢に比べ不十分とされるコスト競争力の強化に加え、官民連携の充実が求められる。

 日本総合研究所の石田直美シニアマネジャーは「従来のインフラ輸出は官がプランを描き、民間企業を呼び込むものだった」と指摘する。ただ、海外で日本の存在感を高めたい政府と、実利を優先する民間企業とでは、考え方の違いが生じることもある。相手国が本当に必要とするインフラの整備と、日本企業の海外市場開拓を両立させるためにも、「民間企業が主導し、それを官が後押しするという姿勢を明確にする必要がある」と石田氏は語る。

 政情不安リスクも

 また、特に新興国でのインフラ開発は一般的に投資回収に長い期間が必要となり、政情不安や債務不履行などのリスクとも隣り合わせで、どう軽減するかが課題だ。野村証券の木下智夫チーフエコノミストは「日本企業が現地でリスクをとる上で、官はモラルハザードにならないように気をつけながら、一定の支援策を講じるべきだ」と話す。

 少子高齢化が進み国内市場が縮んでいく中、日本が経済成長を実現するには新興国などの成長を取り込むことが不可欠。日本が培ってきた技術や経験を生かしたインフラ輸出はその有力な布石で、「オールジャパン」の真価が問われる。(SANKEI EXPRESS

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