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「羊」追って ハルキストの聖地発見

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「羊」追って ハルキストの聖地発見

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 北海道北部の美深町(びふかちょう)が、作家、村上春樹さんの長編小説「羊をめぐる冒険」(1982年)に登場する町のモデルではないかと注目を集めている。聖地巡礼と称して訪れるファンも増え、地元観光協会は「小説を片手に観光を楽しんでもらいたい」と意気込んでいる。

 作品と重なる美深町

 主人公の男性と恋人が、背中に星形の模様のある羊と親友の行方を追って北海道を旅する物語。札幌で「羊博士」から手掛かりを得た主人公らは、列車を乗り継いで「十二滝町」を目指す。

 多くの滝があり、シラカバ林が広がる美深町は稚内市と旭川市のほぼ中間に位置し、人口約4800人で農業や林業が盛ん。十二滝町の風景と重なるとしてファンが集まるのが、美深町の中心部から車で約30分の仁宇布(にうぷ)地区だ。

 「この中に背中に星がある羊がいるかも」。9月下旬には約10人がツアーで物語と類似するスポットを巡り、朗読会で小説の世界に浸った。

 企画したのは、東京都世田谷区の会社員、中川紘司さん(33)。仁宇布で約500頭の羊を飼育し、民宿「ファームイン・トント」を営む柳生佳樹さん(65)が小説との類似点をインターネットで発信しているのを知り、訪れたのがきっかけだ。

 仁宇布付近には、主人公が目的地の放牧場に向かう途中で通った「不吉なカーブ」に似た函岳の山道や、「テーブルのようにのっぺりとした広い台地」のイメージに合った松山湿原もある。

 小説に美深町の名は出てこないが、似た点が多く「ここだ」と直感した。中川さんは何度も通い「空想の世界が多い村上さんの小説で、舞台を感じられる場所は数少ない。ファンが集まるならここしかない」とツアー開催を思い付いた。昨年から4回のツアーを開き、計約70人が参加した。個人旅行で訪れるファンも増えているという。

 ヒッピーの格好で取材

 村上さんは道内で小説の取材をしたことを自身のエッセーで明かしている。滝川市の道立滝川畜産試験場(当時)で、羊研究の草分け的存在だった札幌市北区の平山秀介さん(79)も取材を受けた関係者の一人だ。

 「当時はやりのヒッピー風の格好で、熱心に羊の飼い方を聞かれた。誰だか分からなかったが、後になって出版社からサイン入りの小説が送られてきた」と振り返る。ファンの間では、平山さんは羊博士のモデルとうわさされている。

 美深町観光協会は9月10日、さらなるファンの呼び込みを目指し、JR美深駅に「村上春樹文庫」をオープンさせた。小説の文章と町の風景写真を併せて展示し、村上さんの小説やエッセー約80冊が並ぶ。

 「間違いなく物語の情景をイメージできる場所だ」と観光協会の小栗卓さん(34)。過疎化が進む町を盛り上げようと、PRに奔走している。(SANKEI EXPRESS

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