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服飾、アート…多様性感じる「青参道」(5-1) 国内に90店舗展開 「HPF」の挑戦

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服飾、アート…多様性感じる「青参道」(5-1) 国内に90店舗展開 「HPF」の挑戦

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H.P.DECOは「アート感のある暮らし」をテーマにしたインテリアショップ。作家、天童荒太(てんどう・あらた)さんもお気に入りのソファを発見してくつろぎ中=東京都渋谷区(宮崎裕士撮影)  【だから人間は滅びない-天童荒太、つなげる現場へ-】

 作家・天童荒太(てんどう・あらた)さん(53)が、社会を支える現場を訪ねる対談連載「だから人間は滅びない」。第4回は衣食住の一つである「ファッション」をテーマに、日本のモードを牽引(けんいん)し続ける「アッシュ・ペー・フランス(以下HPF)」代表、村松孝尚さん(60)と対談した。

 自称“ファッション音痴”の天童さんと、元カルチャー誌の編集者で、魚河岸で働いていたこともあるという異色の経歴を持つ村松さん。斬新な視点から、モードの本質について語らった。

 ≪「人ありき」 そこから全てが始まった≫

 ファッションの聖地、東京・表参道。思い思いにこだわった服装の男女が行き交うこのエリアに、「青参道」と名付けられた通りがある。表参道と青山通りを結ぶ路地のことだ。

 名付けたのは国内約90店舗のショップやギャラリーを展開するHPF。服飾にとどまらず、アクセサリー、インテリア、果てはアートまで、「生活と文化」に関するさまざまなジャンルに及ぶ。

 「やりがい感じる」

 その多様性を実感できるのが、HPFが手がける12店舗が並ぶこの「青参道」だ。エレガントな婦人服に、とんがったテイストのベルリン発のセレクトショップ。ボーダーレスなインテリアショップがあるかと思えば、アルゼンチンのランジェリーショップや、アートギャラリーも。「HPFはたとえるなら『共和国』。それぞれのバイヤーがショップやギャラリーごとに自分の『国』を作り上げ、それが集まってHPFを形づくっているのです」。こう話すのは、男性向けセレクトショップ「DECOdeBONAIR」のバイヤー、上尾智昭さん(52)。

 その理由は、村松さんの独特な仕事の始め方にある。企画ではなく、人ありき。面白いと思った人がいれば、「この人がいたら何ができるだろう」との発想で企画や店を立ち上げるのだという。上尾さんは「社長(村松さん)に『どういうコンセプトでいきましょうか?』と尋ねると、『上尾さんそのものを出してくれればいいから』との答えが返ってくる。自分が生きてきた人生経験全てをいかせるわけです。すごくやりがいを感じますね」

 ギャラリー「hpgrp GALLERY TOKYO」を担当するディレクター・戸塚憲太郎さんは、もともと自身も彫刻家として活動していた。「『こういうヤツが入社してきたからギャラリーをやってみよう』という発想だったみたいです(笑)。自分もHPFでアート事業を手がけるうちに、彫刻家としての活動よりも、こっちの方が面白くなってしまって。今は、個人としての活動よりも、『どうやったら日本でアーティストが職業としてやっていけるのか』などを考えていくことが、自分の役割だと思っています」と話す。

 「創造性」という価値

 HPFは、もともと一軒のレディースファッション小売店から始まっている。1984年、カルチャー誌のジャーナリストとして活動していた村松さんが、妻が勤務していた店を買い取ったのだ。

 知人との交流をきっかけにフランスファッションに魅了された村松さんは、現地のアーティストによるアクセサリーなどの作品を日本に持ち込む。ガラス玉のアクセサリーに、財布も入らない小さなバッグ。当時は「役に立たないもの」とされたそんなアイテムに、村松さんは「創造性」という価値を見いだし、商品として成立させることに成功する。

 以来二十数年。HPFは国内外のデザイナーらによる合同展示会「rooms」、渋谷を舞台にしたファッションの祭典「シブフェス」、アートでショップをつなぐ「青参道アートフェア」など、小売りを超えた分野にまで幅を広げている。多様な人材を得て、銀河のような広がりをみせるHPF。モードは走り続ける。(取材・構成:塩塚夢/撮影:宮崎裕士/SANKEI EXPRESS

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