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地域住民と作る「はじまりの美術館」 2014年6月開館予定、さまざまなアイデア

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地域住民と作る「はじまりの美術館」 2014年6月開館予定、さまざまなアイデア

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11月4日に開かれた「はじまりの美術館」の開館に向けた寄り合い。多くの地域住民が参加し、活溌に意見やアイデアが出された=福島県猪苗代町(日本財団撮影)  【ソーシャル・イノベーションの現場から】

 福島県猪苗代町に、2014年6月に開館する予定の「はじまりの美術館」は、地域に親しまれる美術館を目指して現在準備を進めている。地域の人が気兼ねなく訪れ、みんなで活用でき、そこに行くと「何かが始まりそう」と期待させられる場所になるよう、地域住民と一緒に構想が練られている。

 はじまりの美術館は、福島県郡山市を拠点とする社会福祉法人「安積愛育園」が、障害者らの作品「アール・ブリュット」を中心とした地域に開かれた小さな美術館として計画した。安積愛育園は、豊かな表現力を持つ知的障害者らが描いた絵画などの魅力を伝えようと、展覧会やグッズ販売を通じて社会に発信してきた。

 2010年にメンバーの伊藤峰尾さん(49)の作品が、パリで開催された「アール・ブリュット・ジャポネ」展に出展され、それをきっかけに美術館開設の機運が高まった。

 立ち上げの費用は、東日本大震災復興支援のためにアート関連企業、カイカイキキから日本財団に寄付された「New Day基金」が原資になっている。基金のコンセプトである「東北から新しい日本をはじめる」から、「はじまりの美術館」と命名し、2013年2月から本格的な開館に向けた検討が始まった。

 積極的な参加者たち

 美術館となる建物は、地域で「十八間蔵」という名で親しまれる築127年になる酒蔵だ。老朽化が激しいうえ、東日本大震災と、その後の大きな余震で、壁がゆがんで穴が開き、立派な梁(はり)も外れてしまったが、それでもけなげに建っていた。「歴史を重ねた蔵を大切に保存したい」という地域の願いもあり、美術館という新たな形で、地域の情報発信拠点として生まれ変わることになった。

 11月4日に開かれた寄り合いには、住民ら約30人が集まった。冒頭に「はじまりの美術館準備室」の岡部兼芳さん(39)と千葉真利さん(25)が、「この美術館は、作品を展示するだけではなく、地域の皆さんに一緒に参加していただける場所にしていきたい」などと説明。参加者からは質問のほか、美術館でやってみたいことなど意見が出された。

 「皆で一緒に作品をつくりたい」「子供たちが交流できる企画をやりたい」「オープンカフェを作ろう」

 参加者の多くが初対面だったにもかかわらず、すぐに打ち解けて、さまざまなアイデアが次々に出てきた。中には写真や見本を持参して提案する積極的な参加者もいた。帰り際には参加者から「次回を楽しみにしている」という言葉をかけられ、準備室の2人は「期待以上の反応だった」と顔をほころばせた。

 求心力のある拠点に

 今回の寄り合いの開催まで、準備室は、「地域の人に親しまれる拠点」を実現するため、地道な活動を行ってきた。コミュニティーデザインの第一人者である「studio-L」や十八間蔵の改修を担当する「無有建築工房」の協力を得て、今年4月から何度も地域住民らを訪れ、「美術館に期待すること」や「不安に思うこと」などについて、ヒアリング調査を行った。夏には、安積愛育園内でワークショップを行い、「理想のお客さま」や「イメージカラー」など具体的な美術館像について議論した。

 全国のまちづくりの実態に詳しいstudio-Lの西上ありささん(34)から「細やかに対応して発信するところは人が集まる」とのアドバイスを受け、岡部さんと千葉さんは、地域のお祭りへの参加や十八間蔵の公開、瓦版「はじまりだより」の発行、フェイスブックでの情報発信などを通じ、地域とのつながりを模索。こうした継続的な地域とのコミュニケーションから、2人は少しずつ手応えを感じ始めた。

 はじまりの美術館は、「地域の人々に親しまれ、誰かに勧めたくなるような場所となり、さらには初めて訪れた人が地縁を育むことができる求心力のある拠点になる」ことを目指している。地域の住民らも参加し議論を繰り返しながら作り上げていくことを大切にし、これからも準備を進めていくという。

 次回の寄り合いは12月2日に開かれる予定だ。活発な意見が出され、どんなアイデアが生まれるのか。今から楽しみでならない。(日本財団・福祉チーム 溝垣春奈/SANKEI EXPRESS

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