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社会
今年の「振り込め」など特殊詐欺 被害最悪400億円超 捜査手詰まり
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神奈川県では振り込め詐欺にだまされないよう注意を呼びかける財産犯罪撲滅ヒーロー「トラセンジャー」も登場。地域ぐるみで防止策が練られている=9月30日、神奈川県横浜市港南区(田中俊之撮影) 「振り込め」などの特殊詐欺の被害が止まらずハイペースで拡大している。さまざまな手口が横行し、今年は全国で過去最悪を記録した昨年の約364億円を上回り、400億円を超える見通しとなったことが11月19日、捜査関係者への取材で分かった。「捜査は現状では手詰まり状態」(警察庁幹部)といい、打開策として捜査現場からは犯行グループの解明のため現行法では認められていない詐欺事件での通信傍受を求める声も高まっている。
警察庁の米田壮(よねだ・つよし)長官は今月(11月)14日の定例会見で「特殊詐欺の被害は大変深刻な状況と考えている。取り締まりをさらに強化する必要がある」と危機感を示した。
警察庁によると、最近の特殊詐欺の被害額は2008年までは年間250億円前後で推移していたが、悪用された口座を凍結する振り込め詐欺救済法が08年に施行されると、09年には約95億円にまで急減した。
しかし、10年以降は再び増加傾向となり、昨年は約364億円と過去最悪となった。今年に入っても被害は止まらず上半期(1~6月)は約211億7000万円と昨年を上回るペース。特殊詐欺の7~9月の被害額は、3カ月間だけで約127億円にのぼった。
警察庁幹部は「オレオレ型が再び横行し始めたと思えば、最近ではギャンブル必勝法の情報提供名目や還付金詐欺などが急増し手口は次々と変わる」と指摘。捜査関係者によると、10~12月も7~9月と同ペースの月40億円程度の被害が予想され、年間で初の400億円を超える可能性があるという。
「振り込め詐欺の犯行グループは実態が不透明な部分が多く、事件の捜査としては暴力団よりもやっかいな連中といえるかもしれない」。別の警察庁幹部が心情を吐露する。
暴力団は、代表者の氏名や本部の所在地、ピラミッド型の組織形態などが、ある程度把握できる。しかし、振り込め詐欺の犯行グループの場合、犯行拠点やメンバー構成、指示系統などの大半が不明。アジトも一定期間で移動するため、捜査は困難を極める。
振り込め詐欺救済法で口座の不正使用が困難になると、振り込み型から受け取り型が増加。被害者宅に現金の受け取りに現れた「受け子」などを逮捕するケースが多くなり、摘発件数と人数ともに増加した。
しかし、「アルバイト感覚の若者が多く、犯行グループの上層部や主犯格について何も知らない末端のメンバー」(警察庁幹部)であることが実情。犯行グループの全体像などの解明に至らないことが多い。
増加を続ける特殊詐欺に、警察庁幹部は「新たな捜査手法として通信傍受を考える時期にきている」と強調する。通信傍受法は2000年に施行され、薬物▽銃器▽集団密航▽組織的な殺人-の4種類の事件に限って電話の傍受を認められているが、「詐欺」は適用外だ。
振り込め詐欺事件などでの通信傍受の適用については、法制審議会(法相の諮問機関)の特別部会で議論が進められている。電話での通信傍受だけでなく、犯行拠点での会話を傍受する捜査手法についてもテーマとなっている。
部会では、詐欺では範囲が広い。対象を絞るべきだ▽必要最小限なものに限定する必要がある-などの慎重な意見も相次いでいるが、警察庁幹部は「通信傍受法の特殊詐欺への適用拡大は何とかコンセンサスを得たい」と議論の推移に期待している。
米田長官は「通信傍受が可能となればメンバー間の上下関係、リーダー格による指示内容が判明しグループ全体の早期摘発につながり有効」と話している。(SANKEI EXPRESS)