SankeiBiz for mobile

【取材最前線】電力会社への意趣返し?

ニュースカテゴリ:EX CONTENTSの経済

【取材最前線】電力会社への意趣返し?

更新

電力システム改革の流れ=2013年11月13日現在  家庭向けを含む電力事業への新規参入を大幅に自由化する改正電気事業法が11月13日成立した。経済産業省の担当者は「競争を促すことで電気料金が安くなり、多様なサービスを自由に選べる時代になる」と胸を張るが、本当に電気料金は下がるのだろうか。

 電力システム改革は2020年をめどに3段階を経て実施。この間に電力小売りの全面自由化、電力各社の発電と送配電部門を別会社にする「発送電分離」の実現を目指す。発送電分離により、新規参入事業者が、電力各社の保有する送電網を公平に使える条件が整うという理屈だ。

 既に欧米諸国では、小売り自由化に歩調を合わせ、発送電分離が広く実現している。ところが、電力中央研究所の服部徹・上席研究員によると、「発送電分離により、欧米で電気料金が下がった事例は確認できません」というから驚きだ。

 これまで同じ会社だった発電会社と送電会社の間で新たな取引が生まれ、「シナジーが失われるだけでなく、取引に伴うコストも発生してくる」という。

 さらに、ドイツでは、自由化に伴って導入した太陽光など再生可能エネルギーの「固定価格買い取り制度(FIT)」によるマイナス面も顕著だ。高い買い取り価格のコストを「賦課金」の形で消費者に転嫁したことから、電気料金が急騰。産業界や一般家庭からは悲鳴が上がっており、日本のFITもドイツを見習うだけでは失敗してしまう。

 また、米カリフォルニア州では、電力会社の送電網更新投資が抑制され、大停電が発生した。

 現時点でメリットが明確でないにもかかわらず、なぜ、日本は発送電分離に突き進むのか。

 「電力業界に対する経産省の長年にわたる恨み辛みからくる意趣返しだ」

 ある経産省OBは、発送電分離の背景をこう解説する。原発事故をきっかけに、これまで意のままにならなかった強大な電力会社を分割し、弱体化させようというのだ。

 真偽のほどは闇の中だが、事実であれば本末転倒だろう。本当に消費者のための電力システム改革なのか、しっかり検証していきたい。(藤原章裕/SANKEI EXPRESS

ランキング