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女性が支える生命 大和田潔

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女性が支える生命 大和田潔

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 【青信号で今週も】

 人は社会的な生き物です。「チンパンジーも“マザコン”傾向 若くして母親亡くすと短命 京都大チーム研究」(MSN産経ニュース11月5日)という野生のチンパンジーの観察結果は参考になります。授乳を終えて成長した若いチンパンジーが若くして母親を亡くすと、長生きできないとのこと。生きていく術(すべ)が学べなかったり、集団の中で守ってもらえなかったりすることが原因のようです。

 人間でも同様です。一緒に子供を育てているように見えても、母親と父親の視点は自ずと異なっています。母親は、自分で新しい命を長い間おなかの中で育み、つらい出産を経て新しい命を生み出します。人間の子供は非常に弱く、生まれたての時には立ち上がれないことはもちろん、目も十分見えません。母親の庇護(ひご)がなければすぐにでも死んでしまうでしょう。生き続けるためには、長年にわたって多大な援助を必要とします。

 男性は外で狩りをして獲物を家に持って帰るように宿命づけられています。穴に落ちるかもしれないし、獲物にやられてしまうかもしれない。女の子から見て、少年たちは危なっかしいことを平気でします。将来の作業を恐れないように鈍感にできているのでしょう。雨の日も嵐の日も、生活の糧(かて)を得続けるため狩りに出かけます。社会が作った順位に従って、ストレスを感じながらも協力しあう必要もあります。集団の結束を守りつつ、個々が生き残るための戦略を練っていきます。

 女性は、危険を避けながら子供たちの小さな変化を見つめ続けます。健康に気を配り、将来困らないように知恵を授けます。男性はなかなか子供の内面や小さな進歩に気づくことができません。さあ、受験という時に急に父親が割り込んできて、せっかくの計画がダメになってしまう姿が小説やドラマでも良く描かれます。

 当たり前のことですが、地球上のヒトは全て女性から生まれました。女性の細やかな観察眼と辛抱強い作業が人類の生命を支えました。男性のロジックは生活の継続の上に成り立つ、副次的なものに過ぎません。

 女性たちが生き生きと暮らせる環境が、豊かでクリエーティブな社会の基礎となります。(秋葉原駅クリニック院長 大和田潔/SANKEI EXPRESS

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