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開催ピンチ ブラジルW杯会場倒壊 突貫工事が裏目 作業員2人死亡
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来年6月のサッカー・ワールドカップ(W杯)ブラジル大会の開幕戦会場となるサンパウロの「コリンチャンス競技場」で11月27日、屋根の建設作業中、重さ約500トンの骨組みをつり上げていた大型クレーンが倒れ、競技場の一部が大きく壊れた。44歳と42歳の作業員2人が死亡し、1人が病院に運ばれた。ブラジルでのW杯競技場建設に絡む死亡事故は3件目。工期の遅れを取り戻すための突貫工事が原因とみられ、国際サッカー連盟(FIFA)は大きな衝撃を受けている。当初予定の12月中に完成しなければ開催準備がさらに遅れる可能性もある。
「サンパウロからのニュースには大変な衝撃を受けた。われわれは犠牲者の家族とともに悲しみに暮れている」
FIFAのジェローム・バルク事務局長は、事故についての感想を簡易ブログのツイッターでこう説明し、ゼップ・ブラッター会長(77)もツイッターで「競技場での2人の作業員の悲劇的な死に深い悲しみを感じている」と哀悼の意を表した。
ロイター通信やフランス通信(AFP)などによると、事故で競技場の東側が大きく壊れ、天井部分の鉄骨が途中からへし折られるように崩れ落ちた。観覧席の部分は無事だったが、競技場の外壁に取り付けた世界最大の液晶パネル(幅170メートル、高さ20メートル)の一部も壊れた。昼休み中だったため、現場に作業員は少なかったが、死亡した2人は鉄骨などの下敷きになった。
事故原因は当局が調査中だが、地元メディアは、工事中のクレーンが競技場の構造物と衝突したか、つり上げていた骨組みや鉄鋼の重みにクレーンが耐えられなかったことが原因と報じている。
競技場の建設工事は2011年5月にスタート。毎日1500人の作業員を動員し、12月中の完成を目指している。建設費は10億レアル(約438億円)で、これまでに工事の94%が終了したという。W杯では開幕戦や準決勝など計6試合を予定しており、収容人数は約6万8000人。W杯後は、クラブワールドカップで昨年、世界一となった地元サンパウロのチーム「コリンチャンス」の本拠地となる。
ブラジルでは、政府の不手際や資金調達の難航で、W杯関連の大型建設工事の遅れが顕在化。突貫工事が各地で展開される一方、W杯の会場予定地では、昨年に首都ブラジリア、今年3月にはマナウスの競技場でも事故で作業員が死亡した。競技場だけでなく国際空港などの建設工事も大幅に遅れている。
作業員の労働組合によると、今回の事故原因の調査のため「コリンチャンス競技場」の工事は最長で約1カ月中断するといい、そうなれば完成が年明けにずれ込む。結局、突貫工事が裏目に出た格好だ。
FIFAは5月、競技場の建設工事の遅れを理由に、W杯ブラジル大会のサンパウロ開催とりやめも検討しているとブラジル側に警告するなど、再三、工事を急がせてきた。
だが、ブラジル国内では総額110億ドル(約1兆1200億円)にものぼるW杯開催費用が高額すぎるとして抗議行動が起きたり、担当閣僚のアルド・レベロ・スポーツ相が10月、来年のサンパウロ州知事選出馬のため12月に辞任すると表明するなど混乱が続いている。そんな中での今回の3度目の死亡事故。道のりはまだまだ険しそうだ。(SANKEI EXPRESS)