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料理には思いやりが大切と分かりました 映画「武士の献立」 上戸彩さんインタビュー
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「今、ちょうど自分に求められる役どころの端境期なのだと思います」と語る、女優の上戸彩(うえと・あや)さん=2013年12月10日、東京都港区(三尾郁恵撮影) 愛らしい笑顔で、映画、テレビ、CMと引っ張りだこの若手女優、上戸彩(28)も、頼りになる母親役が板についてきた。今年大ヒットしたテレビドラマ「半沢直樹」(TBS系)では、極悪非道の幹部たちに鉄槌を下そうと奔走する銀行マンの夫を健気に励ます主婦を好演。映画「おしん」(冨樫森監督)では子供と離ればなれになる母親役に体当たりで挑んだ。
上戸は「今年は奥さん役が確かに多かったですよね。最近、私が出演した映画でいえば、『テルマエ・ロマエ』シリーズ以外はだいたい奥さん役でした。特に『半沢直樹』の撮影中、私は、自分には奥さんのイメージがない気がして悩んでいたんですよ」と明かしたが、今では思い切って仕事を引き受けて本当によかったと思えるという。心配していた世間の反応も悪くなく、「私が奥さんのイメージで見てもらえるようになったみたいなんですよ」。
そんな上戸が主演を務めた映画「武士の献立」(朝原雄三監督)は、武家の料理人に嫁いだ女性の内助の功と夫婦の絆を描いた時代劇だ。意外にも映画での主演は、「あずみ2 Death or Love」(2005年)以来、8年ぶりとなる。
公開初日の12月14日、舞台挨拶で上戸はその理由を吐露していた。お客さんにお金を払って見に来ていただくということに対し、キャリアを積むほどに畏れを募らせるようになり、主演は意識的に避けていたというのだ。だが、本作については「自分が強くやってみたいと感じた仕事だから、主演も引き受けてみよう」と前向きな姿勢で臨むことができたという。
優れた味覚と料理の腕を持つ春(上戸)は、気の強さがあだとなり、前の夫とは離縁したが、加賀藩台所方の舟木伝内(西田敏行)に料理の才能を見込まれ、跡取りの安信(高良健吾)に嫁入りする。安信は剣の能力には秀でていたが、料理の腕前はさっぱり。春は何とか夫に一流の「包丁侍」になってもらおうと、「ああしなさい」「こうしなさい」と細かく指示し、時にはにらみつけてまで料理の秘訣を教え込もうとするのだが…。
派手な殺陣のシーンは登場しないが、包丁を使った真剣勝負が見せ場の一つだ。上戸は、無駄のない包丁さばきで魚や野菜をおいしそうな料理に仕上げていく春と出会ったことで、「料理には他者に対する思いやりが込められていなければならないと分かったし、その心意気は素敵なこと」と考えられるようになった。今までは「『料理は女性がしなければならないものだ』という考えが自分の中にあり、料理=義務感が付きまとうもの、というとらえ方をしていた」という。きっと春という女性は、新婚の上戸が今、出会うべくして出会った運命の人物なのだろう。
プライベートでの上戸の料理の腕は「人並み」だそうだ。「普通に毎日料理を作っていますよ。和食が多いですね。時間をかけて凝った料理というよりも、パパッと作れるものだけ」。母親から引き継いだレシピは「カレー」ぐらい。料理が得意な母親は、何をしているのか分からないほど料理するスピードが速かったため、覚えようにもうまく理解することができず、「教わった」と思えるものはなかった。ただ、「20歳になる直前に、(この年齢になって)包丁も持てないのは恥ずかしいと思った」という上戸は、当時出演していたテレビドラマ『3年B組金八先生』(TBS系)の監督で、後に『半沢直樹』も手がけた福沢克雄(48)からよく料理の手ほどきを受け、腕を上げたそうだ。
まもなくスタートする新たな年に、大好きな仕事以上に重点を置いてみたいと思っているのは、「家にいること」。幸せいっぱいの上戸らしい答えが返ってきた。「私はこれまで家でゆっくり過ごした経験があまりないから、家にいると落ち着かないんです。出好きということではなく、仕事が忙しくて家にいられなかったんです。新年は、家が居心地がいいと思える年にしたいです」。公開中。(文:高橋天地(たかくに)/撮影:三尾郁恵/SANKEI EXPRESS)
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