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語ることがなければ消えてしまうのです 映画「フォンターナ広場 イタリアの陰謀」 マルコ・トゥリオ・ジョルダーナ監督に聞く
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「俳優たちは資料を調べ、当時の映像をよく研究して、役作りに臨んでくれた」と語るマルコ・トゥリオ・ジョルダーナ監督(ムヴィオラ提供) 1969年12月12日、イタリア・ミラノの銀行が何者かに爆破され、100人を超す死傷者が出た。捜査当局はアナキストたちを逮捕したが、リーダーの男、ジュゼッペ・ピネッリ(ピエルフランチェスコ・ファビーノ)が署内で謎の転落死を遂げたことで、世論は黒幕が別にいるのではないかと敏感に感じ取る。取り調べを担当したルイージ・カラブレージ警視(ヴァレリオ・マスタンドレア)は真相に迫ろうとするが…。
イタリアを代表する映画監督、マルコ・トゥリオ・ジョルダーナ(63)の新作「フォンターナ広場 イタリアの陰謀」(公開中)は、当時のイタリアを震撼(しんかん)させた未解決のテロ事件「フォンターナ広場爆破事件」を掘り起こした社会派作品だ。複雑なイタリアの内政事情に手を焼いたようだが、登場人物はすべて実名で、存命者もいるだけに、作品には手抜かりなく描こうという緊迫感が最後までみなぎっている。
ジョルダーナ監督が40年以上も前の事件を映画化したのは、事件が青年時代の忘れがたい「極めて個人的な思い出」だったからだ。ジョルダーナ監督はSANKEI EXPRESSの電話取材に「事件が起きた直後、偶然、現場近くに居合わせました。まだ19歳だった私は大学へ行く途中でした。大惨事を目の当たりにして大きな衝撃を受け、この事件を忘れたことはありませんでした」と振り返り、映画監督となってからは「いつかこの事件に関する映画を撮りたいと胸に秘めていました」と語った。
映画化に踏み切った理由がもう1つある。ジョルダーナ監督はこの事件を知らないイタリアの若者が多くなったことを憂慮してのことだった。「歴史的事件は忘れ去られるべきではなく、何が起きたのかを知ることは時代を経ても大切です。語ることがなければ、どんな出来事も消えてしまうのです」。「映画は何が起きたのか真実を伝えることができる有効な手段」との強い信念を持つジョルダーナ監督は、しっかりと事件の全体像を再構築できれば、当時の国民が抱いていた微妙な感情までもすくい取れると考えたそうだ。
実はジョルダーナ監督は高校時代、主人公に据えたカラブレージ警視に会ったことがある。「私は学生運動で高校を占拠しました。その時に首謀者の一人である私を取り調べたのが彼です。彼は当時30歳。とても若かった。いつの間にかずいぶんと時がたってしまい、不思議な気持ちです。高校時代といえば、悩みのない楽しい時期であっていいはずですが、私の場合、血のにおいさえする闘争の時代だったといえますね」
事件はその後、何らかの陰謀が引き金となり、事件関係者の暗殺や復讐といった負の連鎖を生んだ。事件を知りすぎたとされるカラブレージ警視は、取調室にいなかったとの理由でピネッリ殺害のぬれぎぬを着せられたうえ、事件の2年後に極左グループに暗殺された。イタリアは事件を契機に長いテロの時代を迎える。公開中。(高橋天地(たかくに)/SANKEI EXPRESS)
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