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現代にアップデートされた本格ソウル ファレル・ウィリアムス
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シンガー・ソングライター、ファレル・ウィリアムス(提供写真) 昨年(2013年)末、おそらく音楽業界初となる24時間ミュージックビデオを公開し、新曲「ハッピー」(アニメ映画『怪盗グルーのミニオン危機一発』のサントラに収録)をヒットさせているボーカリスト、ファレル・ウィリアムス。1960年代ジャズロックのリズムを取り入れ、多幸感を与えるコード進行の上で、彼が「Cause I’m happy!」と歌えば、きっと誰もが心を許してしまう。しかも関連作品が1月27日に受賞者が発表されるグラミー賞の7部門にノミネート。伝説のディスコグループ、CHICのナイル・ロジャースとともにフィーチャーされたDAFT PUNKの世界的大ヒットもあり、2013年は彼の年だったという思いが強い。
そのファレルが、今年、8年ぶりにニューアルバムをリリースするという情報が伝わってきた。ファレルといえば、R&B、ポップ、ロック、ヒップホップとさまざまな音楽ジャンルを横断し、メジャーとアンダーグラウンドの垣根を越えて支持される希代のボーカリスト。デザイナーの肩書も持ち合わせ、音楽のみならず、ストリート系とラグジュアリー系の双方に影響を持つファッションアイコンでもある。
こうして彼の存在について書くことで彼がいかに貴重な存在であるかがおわかりいただけると思う。クラブシーンで若者を熱狂させる楽曲で歌っているかと思えば、世界最高の音楽賞にもノミネートされる。ラッパーとのコラボレーションで、B-BOY(ヒップホップの愛好家たち)の共感を呼んだかと思うと、高級ブランドの雑誌広告にも登場し、セレブリティーとして注目を集める。
ここまでの振れ幅を持ち、一般人からサブカルチャー好きまでにアピールできる音楽人は希有である。強いて言えば、レディー・ガガが彼に迫る存在ではあるが、ファレルが旧譜を愛好するマニアックなDJからも評価されているのに対し、彼女の曲はクラブでもどちらかというと昔ながらのディスコに近い“大箱”の切り札として使われるポップチューン。それにファレルは、ガガと違って単なるセレブではなく、街のキッズたちのリアリティーを理解したテイストメーカーでもあるのだ。このボーダーレスなバランス感覚こそが独壇場なのだ。
日本にありがちな作られたスターではなく、彼が自分のセンスで活動している証拠は、単なる歌手ではなく、自分で曲も作り、時に、自分以外のアーティストをプロデュースしていることに表れている。
彼のスタイルは、サウンドの方向性やアレンジとの組み合わせで見事に現代の音楽にアップデートされているが、本質的には1970年代ソウルを下敷きにした本格派志向だ。また、ヒップホップやロックといったワイルドな音楽にシフトする際も、決して流行に左右されることなく、彼の洗練された歌唱法を貫いている。アイデンティティーを維持しながら違和感なく自らを溶け込ませているあたりも尋常ではないのだ。
業界の噂では、ファレルは天才少年を集めた学校の出身だとか。在学中に音楽に目覚め、同級生とバンドを組んでこの道に進んだといわれている。彼の成功を天才の芸当としてただ感心するのか、それとも天才と同じ時代に生きる感動を実感するのかは、受け取る人の自由だろう。それでも、僕は彼の全方位的な説得力に進んで共鳴したいし、その一貫性を一音楽人として見習いたいと思う。
ただでさえ不振な音楽業界で、彼の八面六臂な活躍に触発されることで損はない。願わくば、共演。あの歌声、ジャズにもきっとハマるはず。共通の友人もいるし、資金は音楽の投資サイトで募ってみるのも面白いかもしれない。曲のクオリティーが高く、音楽に個性があればスターであっても気軽にOKしてくれるかも…と思わせる親近感もまた、彼の魅力なのかもしれない。
アルバム発売前後に来日の噂もある。今年もまた、ファレル旋風が巻き起こる予感がする。(クリエーティブディレクター、DJ 沖野修也/SANKEI EXPRESS)