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ジャズの先鋭性を拡張するベーシスト デリック・ホッジ
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ロバート・グラスパー・エクスペリメントのベーシスト、デリック・ホッジ(提供写真) 現代のジャズとは何か? その問いに一つの答えを出したのが、ジャズピアニストのロバート・グラスパーである。2013年にエリカ・バドゥ、レイラ・ハサウェイといったボーカリストをフィーチャリングしたアルバム、『BLACK RADIO』でグラミー賞を獲得する。しかし、カテゴリーはR&B部門であった。これは、最新のジャズと21世紀のソウルミュージックの親和性の高さを物語る事実であったと同時に、ジャズ批評が正統派を重要視していることの表れでもあった。そして、ジャズミュージシャンの可能性を示唆する事件でもあったのだ。実は、ロバートは、『BLACK RADIO』を個人名で制作していない。それはロバート・グラスパー・エクスペリメントというプロジェクトバンドでのリリースで、個人名を冠した通常のピアノトリオとの差別化を、彼が意識的に図っていたといえる。つまり、アーティストサイドからもオーセンティックなジャズの枠組みに収まらない実験を試みた自覚があったに違いない。
このロバート・グラスパー・エクスペリメントのベーシスト、デリック・ホッジが2014年初頭に来日を果たす。ロバート同様、名門レーベルのブルーノートからソロアルバムを発表しているデリックだが、その音楽性はジャズとヒップホップやR&Bといったコンテンポラリーなブラックミュージックを結びつけたロバート以上に雑食的で、さらにジャズの先鋭性を拡張している。ロバート・グラスパー・エクスペリメントでの経験を基調にしながらも、ラップ、ブレイクビーツ、ファンク、フュージョン、さらにはフォークのエッセンスまでを取り入れたクロスオーバーな音楽センスでオリジナリティーを確立しているのだ。
この20年、ジャズを折衷主義音楽として見直し、ダンスミュージックとしてよみがえらせてきたのはDJたちであり、多彩な音楽とジャズを融合させてきたのも、楽器を演奏しないDJ系の音楽プロデューサーであった。このデリックによる異種配合音楽の創造は、まさに演奏者の復権であり、彼らがDJ的な自由度を獲得し、主導権を奪還せんとする高らかな宣言のようでもある。
もちろん、DJたちはデリックの音楽をサポートしているし、決して対立することはないだろうが、プライドをかけてミュージシャンたちを触発し、さらなるジャズの進化を誘発するに違いない。選ぶものと選ばれるものの切磋琢磨により、より良いインスピレーションの循環が生まれることに期待したい。
とにかく、プレーヤーとしてDJを凌駕する柔軟な発想を持ち、ジャズそのものの進化に身をもって貢献しようとしているデリックには大きな注目が集まっていることに間違いはない。ベーシストという、ともすると主役を補佐する役目と思われがちなポジションでありながら、バンドを率いてリーダーとしていかなる存在感を発揮するのかを生で目にする日を日本のファンも待ちわびているはずだ。
ロバート・グラスパー・エクスペリメントとはどこがどう違うのか? また、彼が提示する現代のジャズとは何なのか?といったことがもうすぐ明らかになるのだ。いや、実験というエクスキューズを伴わない本人名義の公演で、ジャズをも一つの要素として取り入れた彼の音楽が一体何であるのかを、聴衆はついに目撃することになるだろう。
便乗や派生ではなく、細胞分裂のごとく、彼が独自のスタンスで会場を沸かせることを僕も楽しみにしている。(クリエーティブディレクター、DJ 沖野修也/SANKEI EXPRESS)