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思考から解き放つ肉体的音楽 アトムス・フォー・ピース

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思考から解き放つ肉体的音楽 アトムス・フォー・ピース

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 目が5つあれば、全員の演奏から一瞬も目を離さずにいられたのに。そんな思いにさせるほど、すご腕ミュージシャンたちの絶妙なアンサンブルによる演奏が展開された。

 アトムス・フォー・ピース(以下AFP)は、当初はレディオヘッドのトム・ヨークが制作した全編エレクトロニックのソロ作品『イレイザー』をライブで具現するために結成されたバンドだった。しかし彼の頭脳から生まれた音楽を生演奏で肉付けするうちに、躍動するジャムセッションを軸に新たな楽曲も誕生し、『AMOK』というアルバムを完成させた。メンバーはトムの他にフリー(レッド・ホット・チリ・ペッパーズ)、ジョーイ・ワロンカー(ベック他)、ナイジェル・ゴドリッチ(プロデューサー/ウルトライスタ)、マウロ・レフォスコ(デヴィッド・バーン他)。フジロックフェスティバル’10年で1度来日したが、今回さらなるハイクオリティーなライブを展開した。

 本能的で活動的

 なかでも生ドラムや電子ドラムを自在に使い分けるジョーイの驚異的かつ壮絶なドラミングには驚かされるばかりだ。そこへ多様な打楽器で繊細なビーツと色彩を加えるマウロに、40歳を過ぎてから音楽大学へ進み、ジャズや作曲法を学んだというフリーが新奇なフレーズを躍らせる。この何層にも深まるリズムがとにかく心地よい。

 さらにはトムのギターやピアノ、ナイジェルの装飾音。歌っているトムの表情も実に気持ち良さそうだ。

 トムに取材した際、「レディオヘッドでは誰もが指示をしてくるし、メンバー同士の関係によって滑らかな流れに乗って作業が進められる。AFPは僕やナイジェルが指示するものの、即座にいろいろなことを試せるし、メンバー間のケミストリーによって最初から本能的で活動的でエネルギッシュ。音楽が肉体的な発散なんだ」と話していた。これだけ複雑緻密な音楽でありながら、思考から解き放つ肉体的音楽はこれまであっただろうか。

 アンコールを含め3部に分かれ、1部では緻密な音響を構築するトム&ナイジェルと、ダイナミクスの塊のごときリズム隊との対比が際立ったが、2部では「Reverse Running」を筆頭に各自が独自の解釈を加えるかのように、リラックスした表情を見せながら演奏していたのが印象的だった。映像化を切望するほど、傑出したライブを堪能することができた。(音楽ジャーナリスト 伊藤なつみ/SANKEI EXPRESS

 ■Atoms For Peace 2009年、トム・ヨーク(Vo,G,Key)を中心に結成。フリー(B)、ジョーイ・ワロンカー(D)、レディオヘッドやトムのソロを手掛けた盟友ナイジェル・ゴドリッチ(Prod,G,Syn,Prog)、マウロ・レフォスコ(Per)。ライブではトムのソロや参加曲、レディオヘッドの曲も交え、全16曲演奏。それぞれが能力を余すところなく発揮し、CDとは違った立体的なサウンドで圧倒した。

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