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【世界自転車レース紀行】(12)ベルギー 寒さ吹き飛ばす熱いシクロクロス
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今シーズンは年間全7戦で開催されたワールドカップ。第4戦はベルギー・ワロン地方のナミュールで開催され、丘の上の城塞にコースが造られた=2013年12月22日(田中苑子さん撮影) 自転車ロードレースのオンシーズンは春から秋まで。屋外で開催されるロードレースは、寒くなるとオフシーズンになるが、逆にその寒い時期にだけ盛り上がる自転車競技もある。
1世紀以上も前に、ロードレース選手のオフトレーニングから始まったと言われる「シクロクロス」という競技で、オフロードや障害物が含まれる数キロのサーキットを規定時間内(男子で60分)で周回し、その順位を競うものだ。
フランスで生まれたと言われるシクロクロス。近年は競技のグローバル化が進み、世界選手権も開催されているが現在、シクロクロス競技の中心はベルギーにある。
トップ選手の大多数がベルギー人であり、クリスマスから年末年始にかけては、世界チャンピオンが出るようなトップレースがベルギーでは週5日も開催され、それらはすべてテレビで生中継されるほどの人気だ。そして熱心なファンは寒さにめげず、足繁くコースに通い、ビールを飲みながらひいきの選手に声援を送る。
≪悪天候、悪路…自然との闘い≫
競技の特徴は、オンロードもオフロードも、そして乗車不可能な階段や砂地といった人工的な障害物もコースに組み込まれているところ。選手たちの自転車は一見、オンロードを走るロードバイクのように見えるが、この競技のためにカスタマイズされた特別なものだ。
悪路でも壊れにくいように頑丈で、変速機やワイヤー周りなどに泥が詰まりにくい工夫が施されている。そして乗車ができない場所では、選手たちは自転車を肩に担いで越えるため、担ぎやすさや軽さも求められる。
さらに、どんな悪天候でもシクロクロスレースが中止になることはまれだ。厳冬期のヨーロッパでは、ときに氷点下10度以下に冷え込むこともしばしばで、コースが氷に覆われることもあるが、それでもレースは開催される。つまり、冬に開催されるシクロクロスは、雨や雪、寒さ、そして路面の泥や氷など、自然との闘いでもあるのだ。難易度の低いコースであっても、天候次第でコースの印象はガラリと変わる。
シクロクロスの選手には、アスリートとしての基本的な強さや自転車を扱う優れた技術だけでなく、どんな悪条件下でもゴールをめざす強い精神力も求められている。(写真・文:フリーランスカメラマン 田中苑子/SANKEI EXPRESS)