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【世界自転車レース紀行】(11)フランス 未舗装路 ゴール目指し力走  

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【世界自転車レース紀行】(11)フランス 未舗装路 ゴール目指し力走  

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 世界中で数多く開催されている自転車ロードレース。どのレースもそれぞれ特色があるが、なかでも4月中旬にフランス、ブルターニュ地方で開催される「トロ・ブロ・レオン」は強烈な個性を放っている。

 ヨーロッパのレースシーズンは2月頃から始まり、3月になると北フランスやベルギーなどで「クラシックレース」と呼ばれる1世紀以上の歴史をもつ伝統的なレースが続き、春の訪れとともに本格的なシーズンを迎える。クラシックレースの多くは、伝統のもとに今でも荒れた石畳がコースに組み込まれ、いずれのレースも非常に過酷なものとなるが、「トロ・ブロ・レオン」は、石畳ではなく「セクター」と呼ばれる未舗装の農道をつないで、選手たちはゴールを目指す。自転車ロードレースは舗装路で開催されるものであり、このような未舗装路がコースに組み込まれるのは非常にまれだ。

 ≪闘志引き立てるブルターニュの大地≫

 「地の果て」と呼ばれるブルターニュ地方は、その名のとおり、フランスの西端に位置している。レースが開催されるラニリまではパリから約600キロメートルあり、車を走らせていると途中から高速道路も途切れてしまう。多くの人が持つであろうフランスのイメージとは少し違っている。

 石造りの白い家々がひっそりと集まる小さな街々、かつてイギリスから伝わった古代ケルト文化が今も人々の生活のなかに色濃く残り、フランス語だけでなくブルトン語という独自言語もわずかではあるが使われている。天気の悪さも有名で、曇りや雨の日が多く、夏でも肌寒い。

 そんな独特な雰囲気が漂う春のブルターニュに、悪路を行く「トロ・ブロ・レオン」はよく似合う。未舗装路を走るのはプロ選手にとっても容易なことではない。パンクなどのトラブルが頻発し、勝つためには実力や精神力だけでなく運も必要だ。

 特別な対策が施された自転車を使っても悪路を走る振動で、手の皮がむけてしまう選手もいるという。それでも選手たちは自転車選手としての誇りと、勝利を目指す貪欲な気持ちをもってゴールを目指す。どこかもの悲しく神秘的なブルターニュの大地が、選手たちのギラリとした闘志を引き立て、それがレースの大きな魅力となっている。(写真・文:フリーランスカメラマン 田中苑子/SANKEI EXPRESS

 ■たなか・そのこ 1981年、千葉生まれ。2005年に看護師から自転車専門誌の編集部に転職。08年よりフリーランスカメラマンに転向し、現在はアジアの草レースからツール・ド・フランスまで、世界各国の色鮮やかな自転車レースを追っかけ中。

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